岩手県宮古湾におけるニシンの産卵場・成育場としてのアマモ場の利用形態

タイトル 岩手県宮古湾におけるニシンの産卵場・成育場としてのアマモ場の利用形態
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 東北区水産研究所
研究期間 2011~2016
研究担当者 白藤徳夫
清水大輔
松本有記雄
山根広大
村瀬偉紀
渡邊良朗
発行年度 2017
要約 岩手県宮古湾において、ニシンの産卵場や成育場としてのアマモ場の利用形態を調べた。湾奥域にあるアマモ場は東日本大震災による津波によって面積が震災前の1/7まで減少したが、震災6年後には震災前とほぼ同じ面積まで回復した。宮古湾に来遊したニシンは、湾奥西岸の植生密度が高いアマモ場を産卵場として利用するが、仔稚魚は東岸の植生密度が低いアマモ場や砂泥域を利用していることがわかった。
背景・ねらい ニシンは沿岸域のアマモやホンダワラ等の海草・海藻類に産卵することから、本種資源の持続的利用のためには、再生産などに利用する沿岸域の環境保全(場の管理)が重要である。岩手県宮古湾に来遊するニシンも湾奥域にあるアマモ場(図1)で産卵すると考えられてきたが、そのアマモ場は東日本大震災による津波によって大きな被害を受けた。本研究では、震災直後から宮古湾奥のアマモ場の調査を行い、被害状況や回復過程を把握するとともに、ニシンの生態調査を実施し、本種がアマモ場を中心に湾奥域を産卵場や成育場としてどのように利用しているかを調べた。
成果の内容・特徴 宮古湾奥のアマモ場の面積は、震災前は50~60 haであったが、震災後の2011年9月には8.4 haに減少していた(図2)。その後、面積は徐々に拡大し、2017年8月には49.4 haと震災前とほぼ同じ面積まで回復した。東岸と西岸のアマモ場の葉長と植生密度を比較したところ、平均葉長では大きな差はなかったが、植生密度では西岸(11.2~139.8株/m2)は東岸(2.2~33.8株/m2)よりも高かった(図3)。産卵場調査では、2013、2016年に湾奥西岸のアマモ場でニシン卵が確認され、同藻場を産卵場として利用していることがわかった。2012~2015年の仔稚魚調査では、5~7月に湾奥中央部に位置する河口域から東岸において仔魚(全長8.1~34.3 mm)と稚魚(35.1~124.4 mm)が採集された(図4)。これらの結果から、ニシンは湾奥西岸の植生密度が高いアマモ場を産卵場として利用するが、ふ化後は東岸へ移動し、植生密度の低いアマモ場や河口域などの砂泥域を仔稚魚期の成育場としていることがわかった。
成果の活用面・留意点 宮古湾におけるニシンの産卵場や生活史初期の成育場は、沿岸のごく一部に限られており、同様の利用形態が、北海道厚岸水域や青森県尾駮沼を利用するニシンでも観察されている。本研究の成果は、本種資源の場の管理に関する指針を提供するものであり、アマモの植生密度が高い場所だけでなく、植生密度が低いアマモ場や砂泥域の保全にも取り組む必要があることを示唆している。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7201&YEAR=2017
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