カニ幼生の「内的な発育最適温度」の推定

タイトル カニ幼生の「内的な発育最適温度」の推定
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 日本海区水産研究所
研究期間 2014~2016
研究担当者 山本岳男
発行年度 2017
要約 変温動物の発育速度(1/発育日数D)と外気温(T)の関係は、これまで直線式(有効積算温度法則の式)を当てはめられることが多かった。一方、S字曲線式のSSI modelは、より実情に即している上に、発育に最適な「内的な発育最適温度(TΦ)」が推定できる。そこで、本モデルを4種のカニ幼生に適用した結果、TΦ値は高生残,高成長の温度および分布域の温度と一致し、有用であることが分かった。
背景・ねらい 温度は生物の生残、成長、発育速度、卵サイズおよび産卵数等に影響するため、水産有用種の資源動向の予測や、養殖生産の安定性を左右する重要な要因である。これまで温度(T)と発育速度(1/D)の関係には、直線モデルである有効積算温度法則の式が適用される事例が多かったが、このモデルは低温部と高温部で観測値とのズレが大きいという問題があった。一方、近年開発されたSharpe-Schoolfield-Ikemoto (SSI) model(図1)は熱力学の法則に基づいており、S字曲線を示すために観測値とのズレが小さく、発育速度に対して低温と高温の両方の悪影響が最も小さくなる温度(内的な発育最適温度TΦ)の推定もできるという特徴がある。そこで、冷水域から暖水域に生息する4種の有用カニ類の幼生(ケガニ、ズワイガニ、アミメノコギリガザミ、温帯と熱帯のタイワンガザミ)の温度と発育速度の関係を過去の論文から引用してSSI modelを適用し、TΦを推定するとともに推定結果の有用性を検討した。
成果の内容・特徴 各種幼生のTΦを第1齢ゾエアで比較すると、亜寒帯から温帯のケガニとズワイガニ(9.06°C)<温帯のタイワンガザミ(19.68°C)<亜熱帯のアミメノコギリガザミ(24.64°C)<熱帯のタイワンガザミ(27.00°C)となり、暖水域に生息する種ほど高かった。(表1、図2)。さらに、ふ化後、徐々に分布水深が深くなるズワイガニでは、発育に伴ってTΦが小さくなった。各種幼生のTΦは、いずれも過去に報告されている高生残および高成長の温度と近い値であり、さらに天然海域での分布温度の範囲にも含まれた(表2)。これらのことからSSI modelから推定されるTΦは、カニ幼生に最適な温度であると考えられた。
成果の活用面・留意点 カニ類の養殖や種苗生産では、飼育水温をTΦに調整すれば、より生残が安定した飼育が可能となると考えられる。さらに天然海域において、TΦと一致する温度帯が存在する時期や場所を調べれば、これまで採集記録が無い幼生(例えばアミメノコギリガザミのゾエア)の分布域が推定可能となる可能性がある。またSSI modelは、魚類、貝類等にも適用出来る可能性もある。なお、SSI modelの適用条件として、試験時の設定温度が5点以上あり、さらに発育速度が高温側で(出来れば低温側でも)曲線を描いている必要がある。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7102&YEAR=2017
カテゴリ 亜熱帯

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