石材の安定質量の汎用的算定法の確立

タイトル 石材の安定質量の汎用的算定法の確立
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 水産工学研究所
研究期間 2015~2016
研究担当者 川俣 茂
小林 学
発行年度 2017
要約 漁場施設に用いる石材の設計では波、流れに対して石が移動しない必要最小限の質量を確保する必要がある。その質量(安定質量)の現在の算定式では石の敷き詰め密度以外の要因が考慮されていないため、場合によって非常に過大な安定質量が算出されていた。様々な条件での水理模型実験を行い、流速波形の非対称性、底面摩擦などの要因も考慮できる石材の安定質量の汎用的算定式を構築した。
背景・ねらい
 石材は安価な漁場施設の材料で海藻の着生基質としてよく用いられる。その設計では、波浪や流れに対して石が移動しない必要最小限の質量(安定質量)を確保する必要がある。これまでの藻場造成では、多くの場合、大型のコンクリートブロックで囲んだ中に石を敷き詰める工法がとられてきた。このような工法により石の安定性が増加し、安定質量を小さくできる。しかし、そのような投石場では最初は海藻が着生してもやがてウニが石の間に棲み着いてその摂食により磯焼け状態なることがしばしば問題になっている。

 一方、砂に薄く覆われた岩礁(冠砂域)に間隔を空けて石やコンクリートブロックなどの基質を設置すると、磯焼け海域であってもウニ等が棲み着かずに海藻が比較的よく着生することが知られている(図1)。しかし、現在の設計法では石を単体で設置する場合の安定質量が大きくなり過ぎ、施工できないという問題があった。その原因は、現行の安定質量算定式が底面との摩擦や波動流速の非対称性などの効果を適切に評価していないためである。そこでこれらの要因を評価することでより精度の高い算定式の構築を検討した。
成果の内容・特徴 水理模型実験により、波や振動流中での石の被害率(1個分以上動いた石の割合)を、周期や流速振幅、底面粗度と石の密度を変えて調べた。物理的考察と統計的手法により、様々な条件下の被害率を統一的に説明できる無次元量Φを導き出した(図2)。被災限界を従来と同様に被害率10%で定義すれば、図中の関係曲線より、被災限界における安定質量は図3に示す式で求められる。徳島県との共同で実施した現地試験では、Umax = 3.5 m/sの非常に大きい流速が観測された。この流速に対して現行の算定式では安定質量は46トンにもなるが、試験的に設置した約2トンの石は被災限界に近い状態で問題になる移動はみられなかった。これに対して、提案式による安定質量は約2トンと試算され、観察結果に近いものとなった。
成果の活用面・留意点 提案式は漁港・漁場の施設の設計法の改訂に反映され、石材の大きさの適正化につながることが期待される。また、設計における石材の安定質量が大幅に小さくなり、磯焼け対策として冠砂域に石材を単体で設置する新たな藻場造成工法の普及が期待される。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7108&YEAR=2017
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