タイトル | ホタテガイにおける下痢性貝毒の局在と個体差、ホヤの下痢性貝毒蓄積 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 中央水産研究所 |
研究期間 | 2014~2016 |
研究担当者 |
鈴木敏之 松嶋良次 |
発行年度 | 2017 |
要約 | 青森県陸奥湾産のホタテガイに含まれる下痢性貝毒の局在と個体差を調査し、殆どの毒が中腸腺に蓄積していた。再標本化解析により、サンプリングには10個体程度からが望ましい事が明らかになった。ホヤでも、下痢性貝毒は主に肝臓に蓄積することが明らかになった。 |
背景・ねらい | CODEX STAN 292-2008により下痢性貝毒はオカダ酸(OA)群と定義され、規制値は可食部あたり0.16mgオカダ酸当量/kgと定められている。日本では、2015年より下痢性貝毒の公定法として、機器分析法が導入された。LC/MS/MS法の感度と精度が従来のマウス試験法と比べて大きく改善しているために、下痢性貝中毒のリスク管理はより高度化されると考えられる。 |
成果の内容・特徴 | 青森県陸奥湾産のホタテガイに含まれる下痢性貝毒の局在と個体差を調査した。野内定点で採取された14-20枚のホタテガイを部位別(中腸腺、生殖腺、外套膜、鰓、貝柱)に分け、抽出加水分解後、それぞれの組織に含まれるオカダ酸群についてLC/MS/MSによって測定した。主要な毒はDinophysis toxin1(DTX1)であり、総量の97%以上が中腸腺に含まれていた。貝柱からは下痢性貝毒は検出されなかった(図1)。野内定点で採取されたホタテガイとムラサキイガイそれぞれ30個体の中腸腺に含まれるDTX1の濃度を、個体別に測定した。ムラサキイガイとホタテガイでは平均値が異なり、ムラサキイガイの方が高かった。再標本化により、その定点の毒含量を正しく反映させるために必要な個体数の推定を試みた。ホタテガイとムラサキイガイそれぞれ30個体の測定データを用い、個体数5から25までの平均値が取りうる値を、重複無しの無作為抽出で1万回反復試行計算した。ホタテガイでは、10個体用いることにより99.8%の確率で30個平均の±20%に収まった。一方、ムラサキイガイでは19個体で98%の確率、15個体で90%の確率で30個平均の±20%に収まった(表1)。宮城県産ホヤについて、定点にてムラサキイガイの毒化が確認された時期にサンプリングされた試料について、糞、筋肉、鰓、肝臓、腸のオカダ酸群の分析を行った。加水分解後に、肝臓からDTX1とOAが多く検出された(図2)。他の組織からは少量の下痢性貝毒が検出され、ホヤの肝臓に特異的に下痢性貝毒が蓄積されることが明らかになった。 |
成果の活用面・留意点 | 下痢性貝毒のリスク管理向上に有益な情報が得られたが、今後も継続してデータを蓄積する必要がある。また、毒を蓄積するホタテガイの中腸腺やホヤの内蔵等の有毒部位喫食の危険性に対する啓発も重要と考えられる。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7188&YEAR=2017 |
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