水田魚道を通過する淡水魚類の長期モニタリング技術

タイトル 水田魚道を通過する淡水魚類の長期モニタリング技術
担当機関 岐阜県水産研究所
研究期間
研究担当者 米倉 竜次
発行年度 2017
要約 農業排水路から水田へと淡水魚類を遡上させ、水田内での繁殖を促すために設置される水田魚道。全国的に普及しつつあるが、長期間、水田魚道を観察し続けることは現実的に不可能であるため、その効果を定量的に検証した事例は少ない。この問題を解決するため、岐阜県情報技術研究所と共同で、水田魚道を通過する魚を自動的に記録する装置(以下、自動計数装置)を開発し、観測を実施した。
背景・ねらい
 自動計数装置(市販されていない。材料費は15万円程度)は、光電センサ、マイコン、カメラで構成されている(図1)。魚が水田魚道を通過すると光電センサが感知し通過時刻が自動的に記録保存されるとともに、上部のカメラで水田魚道を通過した魚の写真を撮り、その画像がメモリーカードに保存される仕組みとなっている。また、3G通信モジュールを付け足すことでWebサーバを介して、自動計数装置の状況(記録状態、バッテリー電圧、記録画像など)が遠隔でモニタリングできる他、LED照明により夜間記録にも対応した。

 この装置を用いた長期無人モニタリングを、2013年より、9地点の水田魚道で開始した。対象とした期間は、稲作の始まる5月中旬から落水時期にあたる8月下旬とした。その期間のうち、61日(1469時間)から109日(2613時間)の期間で水田魚道を通過する魚を観測した(図1)。
成果の内容・特徴
 計数装置による長期無人モニタリングの事例を図2に示した。9地点の水田魚道で撮影された魚の総個体数は41,617尾となった。また、撮影された魚の種類は合計13種となった。撮影尾数の多い代表的な種は、フナ類(15,441尾)、タモロコ(5,969尾)、メダカ(4,579尾)、ドジョウ(4,334尾)、コイ(2,890尾)であった。

 代表的な魚種それぞれの撮影記録を見ると、水田の水深が7cm未満では水田魚道をあまり魚が通過していないことがわかった。代表的な魚種全てで、水田魚道の通過は水田の水深が10cm~15cmのあたりにピークがあり、水田の水深が20cmを超えるあたりから再び魚の撮影枚数が減少し始めた。なお、水田の水深が20cmを超えてからの減少は、特にドジョウ、メダカ、タモロコといった小型魚が顕著で、コイやフナ類などの大型魚ではその傾向は緩やかであった。さらに、通過した時間帯の違いを大別すると、昼間に通過記録の多い「昼行性」、夜間に通過記録の多い「夜行性」、昼夜問わず通過記録の多い「昼夜性」に分けることができた。昼行性の代表的な種はメダカであり、夜行性の強いナマズは、22時あたりに通過記録のピークがあった。残りのフナ類、ドジョウ、コイ、タモロコは昼夜を問わず水田魚道を通過する「昼夜性」に分類できた。
成果の活用面・留意点 上記の事実から、水田魚道への通水管理は、水田水深が低くても高すぎても不適であり、水田の水深を10cm~15cmの範囲で保つことが重要であると考えられた。特に、ドジョウ、メダカ、タモロコといった小型魚の遡上を増やすためには、水深が20cmを超えるほどの過度の水深管理は逆効果であると言えた。また、メダカの遡上を促進させるには昼間の通水が望ましい一方、ナマズは夜間の通水が望ましいことがわかった。その他の魚種に関しては、地域や管理者の都合に合わせた水深管理を行えば良いと考えられた。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=7110&YEAR=2017
カテゴリ 水田 繁殖性改善 水管理 モニタリング

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