タイトル | タブレット端末一つで森林気象害の被害地調査と被害種別判定 |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
鈴木 覚 高橋 正義 伊藤 香里 平浪 浩二 糸川 結花 佐藤 宏行 宮澤 國明 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 強風や豪雪、低温、乾燥などの気象害によって山の樹々が枯れたり、倒れたりしていた時にタブレット一つで被害原因の判別と、被害調査ができるシステムを開発しました。 |
背景・ねらい | 山のある場所の樹木がたくさん枯れたり、倒れたり、折れることがあります。強風、豪雪、低温、乾燥などの厳しい気象条件がそのような被害を引き起こす原因と考えられ、総称して気象害と呼ばれます。気象害は時間が経ってから発見されることが多く、十分な経験と知識がなければ原因を推定することが困難でした。そこで、過去の気象害のデータをもとに、被害形態、地形、樹種などの被害情報をタブレットに入力すると被害原因が判別されるシステムを作りました。また、GPSで位置情報を取得する機能や被害地の写真を撮影する機能を組み込み、森林の管理者や森林保険にかかわる人が、誰でもタブレット一つで被害地調査と被害原因の判別を行えるシステムとしました。 |
成果の内容・特徴 | 気象害は判別が難しい 気象害とは、強風、豪雪、低温、乾燥などの厳しい気象条件が原因で発生する、枯死、根返り、幹折れなどの森林被害のことです。気象害が発生している厳しい気象条件の時に人が山に立ち入ることは少ないため、被害の発見はどうしても発生から遅れてしまいます。時間が経ってから被害の原因となった気象現象を特定するには、相当の経験や知識がなければ困難です。 被害対策として、森林保険の手続きとして被害原因を知る 気象害が発生した後には、被害木の伐採などの処理を行い、補植や植え替えをしなければなりません。しかし、気象害は特定の地形、樹種、樹齢で発生することが多いため、被害原因を特定して対策を講じておかないと、再び同じ被害にみまわれる危険性があります。また、気象害の被害を補償する制度として森林保険がありますが、保険の補償を受けるには、やはり被害原因を特定しなければなりません。 タブレット一つで被害原因の判別と被害地調査をする それぞれの気象害が特定の条件下で発生しやすいことを逆手にとって、被害の発生状況から被害原因を特定するシステムを開発しました。開発にあたって、いつ、どこで、どの樹種が、どのような被害を受けたのか、既存の被害報告や論文から情報を取り出し、それらを訓練データとして蓄積しました。被害が発生したときは、タブレットに表示される設問に対して現地の状況を見ながら選択肢を選んでいくと、訓練データを参照して被害原因が判別されます。対象とする気象害は、風害、雪害、干害、寒風害、凍害、潮害で、被害種別ごとにそれが原因である確率が計算されます(図1)。また、タブレットのGPSで被害地の位置情報を取得するとともに、選択肢を選びながら、内蔵カメラでその状況を撮影しておけば、すべての選択画面を終えたときには、被害状況が一通り記録できます。さらに、森林保険と連動させれば保険の契約情報を呼び出すことも可能です。このシステムを用いることで、熟練した経験や知識がなくても、タブレット一つで気象害の被害地調査と被害原因の判別ができるようになりました。 気象害の知識磨きと被害情報の収集も行えます 被害状況の選択肢を選ぶとき、様々な角度から被害の様子を確認するので、気象害の知識や見方が身につけられます。また、被害情報を統一形式で集積するシステムになっているため、データを蓄積してシステムに学習させれば、さらに推定精度を向上できます。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p8-9.pdf |
カテゴリ | 乾燥 GPS 凍害 |