タイトル | 木材生産と生物多様性保全の両立をめざす保残伐施業の実証実験 |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
尾崎 研一 山浦 悠一 佐藤 重穂 佐山 勝彦 山中 聡 稲荷 尚記 明石 信廣 雲野 明 対馬 俊之 長坂 晶子 長坂 有 庄子 康 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 生物多様性に配慮した主伐方法である保残伐を人工林に適用する、国内初の実証実験を開始しました。これまでの調査から、保残伐は木材を生産しつつ、伐採直後の森林性種の保全に役立つことが分かりました。 |
背景・ねらい | 多くの人工林が主伐期を迎え、木材生産と生物多様性保全を両立させる伐採方法が求められています。そこで、生物多様性に配慮した主伐方法である保残伐を、人工林に適用するための国内初の実証実験「トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験」を2013年に開始しました。この長期実験のうち、今回は伐採コストと伐採直後の生物多様性を調べました。その結果、広葉樹の単木保残は伐採による森林性種の減少を抑制し、群状保残の保残部分は森林性種の避難場所となることが分かりました。また伐採コストの増加は最大でも約5%でした。以上の結果から、保残伐は木材を生産しつつ、伐採直後の森林性種の保全に役立つことが分かりました。 |
成果の内容・特徴 | トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験とは 日本では多くの人工林が主伐期を迎え、木材生産と生物多様性保全を両立させる伐採方法の開発が必要になっています。近年、生物多様性に配慮した主伐方法として保残伐が世界的に注目されていますが、人工林への適用例はほんどありません。そこで、国内初の保残伐の実証実験として「トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験(略称REFRESH)」を北海道有林の協力を得て2013年に開始しました。 実験の概要 本実験では、トドマツ人工林と広葉樹天然林に1区画の面積5~9haの実験区を設け、8つの処理を3セット設置しました(図1)。単木保残区では人工林内に天然更新した広葉樹林冠木を3段階の量で保残しました(図2)。一方、群状保残区では実験区の中央に保残部分を残し、閉鎖林分の環境を維持しました。伐採は2014年から1セットずつ3年かけて行いました(図3)。伐採後は、通常の人工林同様に地ごしらえ、トドマツの植栽、下刈りを行っています。 生物多様性と木材生産性への影響 これまでに、伐採コストと伐採直後の生物多様性等を調べました。伐採コストに関しては、保残伐では皆伐に比べ、伐倒で最大1割、木寄せで最大3割のコスト増が発生しました。しかし、これらの工程が全体のコストに占める割合が小さいため、全体を合計したコストの増加は最大でも約5%にすぎませんでした。次に生物多様性に関しては、鳥類では森林性種のなわばり密度は単木保残の保残量が多いほど増加しました(図4)。林床植物では、伐採によって消失した種数は保残量が多いほど少なく、群状保残の保残部分は植物の避難場所となっていました。一方、地表性甲虫類では、森林性種の個体数は単木保残の保残量が多いほど増加しました。また、群状保残の保残部分では森林性種の個体数が増加しました。以上の結果から、広葉樹の単木保残は伐採による森林性種の減少を抑制し、群状保残の保残部分は森林性種の避難場所として機能することが明らかになりました。 木材生産と生物多様性保全の両立にむけて 今回の結果から、保残伐は伐採直後の森林性種の保全に役立つことが分かりました。一方で、保残伐の効果は対象とする生物群によって異なることが予想され、実際の施業への適用にあたっては、柔軟な技術的配慮が必要と考えられます。今後は伐採後の生物の回復状況や植栽木の成長を調べ、最終的には次の主伐までの約50年間、長期的な継続調査をめざします。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p16-17.pdf |
カテゴリ | コスト |