タイトル | 新たな地ごしらえ機械の導入で下刈コストを削減し、低コスト再造林施業を実現 |
---|---|
担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
原山 尚徳 上村 章 佐々木 尚三 山田 健 宇都木 玄 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 緩傾斜地が多い北海道の再造林地に新たな地ごしらえ機械を導入し、地ごしらえの効率化を図るとともに下刈回数を大幅に低減できました。このことで、カラマツの再造林費用を大きく削減できました。 |
背景・ねらい | 低コスト再造林施業を進めるため、北海道の傾斜が緩やかな林地でクラッシャという新しい地ごしらえ機械を導入し、カラマツの植栽実証試験を行いました。クラッシャによる地ごしらえは、人力や従来の機械地ごしらえよりも作業効率が高く、コストも削減できました。さらに地ごしらえ過程で発生する枝条などの破砕物が土壌を覆うため、雑草木の成長が抑制され、下刈費用の大幅な削減が可能となりました。一方、植栽孔を掘るために破砕物を除去する必要があり、裸苗では植えつけ効率が低下しました。しかし地ごしらえ費用や下刈費用削減の効果が大きく、北海道で最も一般的な手法と比較して、再造林全体のコストを最大で37%削減できることがわかりました。 |
成果の内容・特徴 | 低コスト再造林の必要性 主伐による木材収入が低迷する中、低コストな再造林システムの構築が大きな課題となっています。日本は南北に長く、気候、立地、樹種などの諸条件が異なるので、各地域に適した再造林システムの構築が必要となります。私たちは、北海道の主要な造林樹種であるカラマツを対象に、緩中傾斜地が多い利点を活かした機械化を行い、再造林作業の効率化や低コスト化を図る研究を進めました。 地ごしらえ機械「クラッシャ」の導入と雑草木抑制効果 地ごしらえの効率化・低コスト化を図るため、主伐時に発生する枝条や伐根を破砕できるクラッシャを導入しました(図1)。これにより、枝条を造林地脇に寄せる従来の地ごしらえ方法よりも作業効率が向上し、コストは人力の57%、従来機械の75%に低減できました。また、クラッシャ地ごしらえで発生する枝条や伐根の破砕物が土壌を覆うことで、雑草木の繁茂が大幅に減少することがわかりました(図2)。 下刈省略 カラマツは雑草木による成長の阻害を強く受ける樹種で、通常植栽後2年間は年2回、その後3年間は年1回下刈を行います。私たちは、クラッシャで地ごしらえをした伐採地にカラマツ苗を植栽し、下刈作業をどの程度省略できるか調べました。その結果、植栽後2年間下刈を省略してもカラマツは順調に成長し、クリーンラーチの大型苗を植栽した場合は下刈を完全に省略できました。他方、主伐時に枝条が少ない林地や、小型なコンテナ苗を植栽した林地では、植栽2年目には雑草木がカラマツを被覆するため、植栽当年のみ下刈の省略が可能であることがわかりました。 再造林コストの試算結果 クラッシャ地ごしらえでは、特に裸苗植栽において破砕物の除去作業が必要となり、植えつけ効率が低下しました。正負の効果を考慮に入れるため、苗種や植栽密度を変えた複数の条件で、クラッシャ地ごしらえの導入による再造林コスト全体を計算しました(図3)。その結果、下刈費用の削減分は植えつけ費用の増加分を大きく上回り、従来の再造林コストを最大で37%削減できることがわかりました。 クラッシャ地ごしらえは急傾斜地や石礫地では導入が困難なものの、北海道の多くの林地で適用可能な新たな低コスト再造林手法です。本州以南のスギやヒノキについても機械化や植物の成長特性を生かした下刈り技術を開発し、地域に適した低コスト再造林施業の構築に向けて研究を進めていきます。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p20-21.pdf |
カテゴリ | 病害虫 機械化 くり 傾斜地 コスト 雑草 低コスト |