タイトル | 低コストのデジタル空中写真で林分材積を高精度に推定する |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究担当者 |
細田 和男 西園 朋広 佐野 真 古家 直行 小谷 英司 田中 邦宏 齋藤 和彦 田中 真哉 家原 敏郎 北原 文章 近藤 洋史 金森 匡彦 大萱 直花 古田 朝子 |
発行年度 | 2018 |
要約 | デジタル空中写真の立体視による平均樹高と本数から、スギやヒノキ、カラマツ人工林の林分材積を精度よく推定する式を地域別に作成し、森林立体視ソフト「もりったい」に組み込みました。 |
背景・ねらい | 比較的安価に購入でき、森林組合などの事業所レベルでも導入し易いデジタル空中写真に着目し、空中写真から林分材積を精度よく推定する方法を開発しました。空中写真から読みとった平均樹高や本数を現地調査のデータと比較して、相互の関係を明らかにしました。さらに、全国各地の国有林に設定されている収穫試験地のデータを用いて、平均樹高と本数からスギやヒノキ、カラマツ人工林の林分材積を求める推定式を地域別に作成しました。この推定式を森林立体視ソフト「もりったい」に組み込むことにより、現地調査を行うことなく、デジタル空中写真から高精度に林分材積を推定できるようになりました。 |
成果の内容・特徴 | 空中写真は身近なリモートセンシング 森林を伐採する際には、収穫できる木材の量や収支を見積もるための事前調査が欠かせません。森林調査は人が林の中を歩き回って、伐採予定区域の面積や立木の本数、胸高直径、樹高などを調べるのが一般的です。しかし、これには多くの人手と時間がかかります。より効率的に調査を行うため、人工衛星画像、航空レーザー測量、3次元レーザースキャナー、ドローンによる低空撮影など様々なリモートセンシング技術の応用が提案されています。本研究では、全国の多くの森林をカバーしており、1,000~2,000円/km2と比較的安価で、森林組合などの事業所レベルでも導入し易いデジタル空中写真に着目し、空中写真から林分材積を精度よく推定する方法の開発取り組みました。 現地調査と空中写真との違い 空中写真は、上空はるか数千メートルを高速で飛行する航空機から撮影されるもので、写真の立体視判読による平均樹高や本数は、現地での森林調査(以下、現地調査)によるものと同じではありません。例えば、同時に植え付けられた立木でも、育ちの遅い下層木は優勢な上層木の陰に隠れ、上空からの空中写真には写りません。本研究を行ったスギ人工林19か所での検証の結果、空中写真の立体視判読による平均樹高は、現地調査におけるLoreyの平均樹高とほぼ一致することが分かりました(図1左)。また、立体視判読による本数は、1,000本/haまでの林では現地調査の本数とよく一致することが確認されました(図1右)。さらに、1,000本/haを超える混んだ林の場合、立体視判読では実際の本数を数えきれないという限界も改めて認識されました。 Loreyの平均樹高と本数による林分材積の推定 森林総合研究所は、林野庁の各森林管理局と共同して、全国の国有林に収穫試験地と称される多数の固定試験地設定し、最も古いものでは1920年代から、胸高直径や樹高、林分材積の測定を継続してきました。本研究ではこの中からスギ、ヒノキまたはカラマツの人工林278か所、のべ2,292回分の調査データを使用し、Loreyの平均樹高と本数から、林分材積を求める推定式を樹種別、地域別に作成しました(表1)。式の推定精度は樹種や地域によって異なりますが、1,000本/ha未満の林分において、多くの式は誤差が15%以内で、サンプリングによる現地調査と遜色ないものでした。低コストのデジタル空中写真を用いて立体視判読を行うことにより、皆伐の対象となる密度1,000本/ha未満の林分においては現地調査を行うことなく、高精度に林分材積を推定することができるようになりました。本研究で作成した林分材積の推定式は、森林立体視ソフト「もりったい」の新しいバージョンに組み込まれています(図2)。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p22-23.pdf |
カテゴリ | 低コスト ドローン リモートセンシング |