木質バイオマスを直接メタン発酵する技術の実証試験 ─放射能汚染バイオマスにも適応可能な新技術─

タイトル 木質バイオマスを直接メタン発酵する技術の実証試験 ─放射能汚染バイオマスにも適応可能な新技術─
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 大塚 祐一郎
ロナルド R. ナバロ
中村 雅哉
真柄 謙吾
発行年度 2018
要約 世界で初めて木質バイオマスを原料とするメタン発酵の実証試験を行いました。様々な樹種、枝葉、樹皮を原料としてメタン発酵が可能なこと、放射性セシウムがメタンガスに移行しないことを実証することができました。
背景・ねらい 「湿式ミリング処理」という新しい処理技術を応用して、木質バイオマスを主原料とした世界初のメタン発酵の実証実験施設を福島県南相馬市小高区に作りました。この施設での実証試験の結果、南相馬市産の様々な樹種、またそれらの枝葉、樹皮などを主原料にして長期間連続的にメタン発酵できる条件を見つけることができました。また東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質の影響を受けた原料を用いた場合でも、生産されるメタンガスには放射性物質が含まれないことを確かめることができました。本実証事業により、木質バイオマスの新しい利用方法が実証されただけでなく、放射性物質に汚染された森林の活用にも貢献できます。
成果の内容・特徴 木質バイオマスのメタン発酵実証実験施設
 森林総合研究所では、湿式ミリング処理という新しい木質バイオマスの前処理技術を開発してきました。これにより、これまで難しいとされていた木質バイオマスを主原料としてメタン発酵が可能になることを実験室レベルでは確認していました(平成27年度成果選集)。今回は、実用化に向けた基礎データを得るために福島県南相馬市小高区において世界初の木質バイオマスを主原料としたメタン発酵の実証実験施設を作り、実証試験を行いました。
 図1は実証実験施設の概観とプロセスを示しています。この施設では南相馬市内で収集した原料を粉砕後、湿式ミリング処理によりスラリー(泥状の混合物)化して、メタン発酵槽へ投入することで、メタン発酵によりバイオガス(メタンガス60%)が生産されます。得られたガスはそのまま燃料になります。発酵排液は固液分離処理で排水と残渣に分け、排水は浄化後にリサイクルします。発酵残渣はプレス機で減容化します。
実証試験の成果:
(1)メタン発酵
 さまざまな条件検討の結果、メタン発酵を安定的に継続するためには木質バイオマスに対して1/10量程度の動物性タンパク質を添加する必要があることがわかりました。動物性タンパク質を添加する条件を見出したことにより安定的なメタン発酵の継続に成功し、さらにスギ・アカマツ・ケヤキ・コナラ材及びそれらの枝葉・樹皮・混合物でメタン発酵できることがわかりました。図2に示すように、メタン発酵によって発生したバイオガスの量は原料1kg当たりスギ樹皮で400L、アカマツにおいては500Lのバイオガスが発生することがわかりました。そのうちメタンガスの濃度は概ね60%で、直接燃焼可能なガスが得られることを確認しました。
(2)放射性セシウムの移行
 原料に含まれる放射性物質が、実証実験のプロセスでどのように移行するのかを調べました。原料に含まれる放射性物質を100%とした場合、メタン発酵によって生産されたバイオガスには放射性物質はまったく移行しないことが明らかになりました。放射性物質の約92.5%は発酵残渣に集められ、残りの3~8%は、リサイクルされる発酵排水に含まれることがわかりました。この結果か、放射性セシウムの影響を受けた原料を使用しても安全なメタンガスを生産できることが実証されました(図3)。
 なお、本成果の詳細につきましては、下記の文献及びェブサイトをご覧ください。
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p26-27.pdf
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