タイトル | 豊富な国内森林資源を活かす CLT の効率的な製造と性能確保の技術を開発 |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
軽部 正彦 |
発行年度 | 2018 |
要約 | CLTの効率的な製造方法を開発するため、材料となる木材・製造の条件と試作した製品性能との関係を検証して、使用するひき板(ラミナ)の形状や材質からCLT製品の性能を予測することができるようになりました。 |
背景・ねらい | ひき板(ラミナ)を並べ、繊維を直交させて積層接着した直交集成板(Cross Laminated Timber, CLT)は、木材を大量に活用する厚く大きな板です。CLTの効率的な製造方法を開発するため、材料となる木材や製造の条件とCLT製品の性能との関係を検証して、使用するラミナの形状や材質から製品の性能を予測することができるようになりました。2016年4月の建築基準法により、CLTは一般的な建築材料の仲間入りを果たしましたが、その改正にあたっては本研究の成果も活用されました。 |
成果の内容・特徴 | ラミナ構成の最適化に向けて CLTの材料となるラミナは、その材料となる原木の樹種や太さ(径級)、丸太から製材される際の木取り(切り分け方)によって寸法や材質が変ってきます。CLTの製造では、あらかじめラミナを樹種や幅・厚さのほか、強度性能にもとづいて選別し、CLT製品内での配置や位置を決定することが重要です。私たちは、同じ樹種で強度が異なるラミナの配置を最適化した「異等級構成」、スギとヒノキの異なる樹種のラミナを使った「異樹種構成」、ラミナの幅を一定にして厚さを変えて組合せた「非等厚構成」、ラミナの幅と厚さの比を変化させた「可変断面構成」、という4つの組合せのCLTを試作して、それぞれの特徴を明らかにしました。試作に用いた各ラミナは、新たに開発した二次元バーコードを利用した追跡方法によって、材料の段階からCLT製品内で積層接着された位置までを追跡できるようにし、ラミナの性能とCLT製品性能の関係を検証しました。 空隙充填性接着剤の開発と接着性能・長期寸法安定性の評価 CLTは、ラミナの繊維方向をほぼ平行にして幅方向に並べ、それらを何層か互いに繊維方向が直交するように積層接着したものです。ラミナの繊維方向を全て揃えた集成材とは異なり、繊維方向が層によって異なるため、収縮率の違いによる製品の変形やラミナ厚さのバラツキによる接着性能の変化を考慮しなければなりません。そこで、これらの影響を緩和できる新しい接着剤の開発と接着性能の評価を行いました。また、ラミナ構成を変えた場合のCLTの各種寸法や反り・曲りなどの経時的な形状変化も検証し、適正な接着条件とCLT製品形状の安定性を明らかにしました。 強度性能評価技術の開発と試作CLTの評価 試作したCLT製品を用いて日本農林規格では規定されていない面内曲げ、引張り、圧縮について性能試験法を確立して評価しました。また、建築物として床・壁に使用された場合を想定した破壊加力実験を行って、強度と破壊性状を明らかにしました。 ラミナからのCLT性能を予測する技術開発 二次元バーコードを使ったラミナの追跡にもとづき、原板ラミナの形状や材質、そして製造条件の異なる試作CLTの強度試験結果を総合して、CLTの各種強度性能値をラミナ性能から推定するソフトウェアを開発しました。このソフトウェアを用いれば、ヤング率のわかっているラミナを使って最適なCLTの積層構成をシミュレーションして製品設計することができます。これにより、利用可能な森林資源の状況に対応したCLTの製造が可能となりました。 これらの成果は、今後、現在より多彩なCLTがJAS規格等で認められるための基礎データとして活用される予定です。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p30-31.pdf |
カテゴリ | 評価法 |