タイトル | 木を焙じて長持ちする舗装材をつくる |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究担当者 |
吉田 貴紘 久保島 吉貴 上川 大輔 増田 勝則 有山 麻衣子 愛須 未紀 矢杉 瑠美 伊藤 貴文 佐野 哲也 三上 隆司 中瀬 吉行 竹内 健二 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 木を焙(ほう)じる程度に炭化することで、長持ちで、歩きやすく、燃料や資材にリサイクルできる「高性能で環境に優しい木質舗装材」を開発しました。 |
背景・ねらい | 公園や遊歩道などで木材のチップを使った舗装を見かけますが、チップがはがれたり腐ったりして、長持ちしないことが問題になっています。そこで、木材を半炭化処理(250℃前後の低温炭化)することで、腐りにくく、耐用年数20年を見込める高性能な「半炭化処理木質舗装材」をつくることに成功しました。この木質舗装材は、アスファルトコンクリート舗装材に比べて歩きやすく、使った後は燃料や資材へのリサイクルも可能です。半炭化処理木質舗装材は人や環境に優しい土木材料として期待できます。 |
成果の内容・特徴 | 木の舗装を長持ちさせるために-「半炭化」でアップグレード! 公園や遊歩道などを歩いていると、木材のチップを固めた舗装を見かけることがあります。石や砂の代わりに木材を使うことで、軟らかく、熱をためにくく、歩きやすい舗装になります。しかし、しだいに木材が腐ったりはがれたりして、舗装が長持ちしないことが問題になっています。木材を炭化すれば腐らなくなることが知られていますが、炭化が進みすぎると木材はもろくなるので、舗装には使えません。そのため、私たちは、木材を焙(ほう)じる程度に炭化(半炭化)すれば腐りにくさ(耐朽性)と強さを両立出来るのではないかと考え、半炭化処理をほどこした木材のチップに適切な接着材を組合せることにより、長持ちする新たな木質舗装材の開発に取り組みました。 腐りにくさと強さを両立する半炭化方法 まず、様々な程度に処理した半炭化木材をつくり(図1)、圧縮や曲げなどの強度を調べました。また半炭化木材チップに石砂、セメント、アスファルト乳剤などを加えた舗装材を作り、野外に置いた時の変化なども調べました。その結果、適度な条件で半炭化処理をすることによって、強度を保ったまま腐りにくくなることがわかりました(図2)。また、半炭化処理すると木材は水を撥きやすくなり、接着材(アスファルト)となじみやすくなるため、雑草が生えにくく、チップがはがれにくくなります(図3)。従来の木質舗装材の寿命が10年程度なのに対し、半炭化処理木質舗装材の寿命は20年程度と考えられ、大幅に長持ちすることがわかりました。また、新たな舗装材に含まれる木材の割合は体積の約70%になりました。 燃料や資材にリサイクル可能な舗装材に 用年数を過ぎた舗装材を有効利用するため、舗装材を燃料に使えるかどうかを調べました。その結果、ある程度の大きさまで砕けば、燃料として産業用途のボイラーなどで使えることがわかりました(図4)。また、災害時には非常用燃料としても活用できます。さらに、燃やした後の灰を舗装材の砂の代わりなどにリサイクルできることもわかりました。 実際に舗装してみる 開発した半炭化処理木質舗装材を、国内数か所の公園、外構などに施工してみました(図5)。接着材にアスファルト乳剤を用いることから、一般的な舗装工事のようにアスファルトを加熱する必要がないため、熱気や臭いの影響がほとんどなく、作業しやすくなります。さらに、舗装材はクッション性にも優れており、被験者の歩行試験においても、多くの人が、足への負担感が少ないと回答しました。 このように、半炭化処理木質舗装材は土木分野における木材の新たな用途を創出するとともに、人や環境に優しい材料として公園や遊歩道などへの導入が期待できます。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p32-33.pdf |
カテゴリ | 病害虫 くり 雑草 |