タイトル | より強いマツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発 |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
平尾 知士 山野邉 太郎 大平 峰子 高橋 誠 星 比呂志 井城 泰一 岩泉 正和 三浦 真弘 松永 孝治 渡辺 敦史 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 日本全国のマツ林で問題となっているマツノザイセンチュウによるマツ枯れの被害を防ぐため、より強い抵抗性品種を効率的に開発するための育種技術とその技術を活用した品種を開発しました。 |
背景・ねらい | マツノザイセンチュウによるマツ枯れの被害は、依然として我が国最大の森林病虫害であり、今後の地球温暖化に伴う環境の変化によって、さらに被害が拡大することが懸念されています。このマツ枯れ被害に対応するため、より強い抵抗性を有する品種を効率的に開発する育種技術の確立が求められています。そこで、より高い病原力を有する線虫系統の選定を行うとともに、接種に適した温度条件を明らかにしました。この成果を接種検定に適用することで、より強い抵抗性品種をアカマツで9品種、クロマツで10品種開発しました。さらに、抵抗性の個体を効率的に選抜するDNAマーカーの開発を行いました。 |
成果の内容・特徴 | マツノザイセンチュウによるマツ枯れを防ぐために 森林総合研究所林木育種センター及び府県の試験研究機関では、マツ林の健全化を目指し、昭和53年からマツノザイセンチュウ抵抗性育種事業を推進し、抵抗性品種の開発を進めてきました。一方、今後、地球温暖化に伴う環境の変化によってマツ枯れの被害が拡大することが懸念されており、より強い抵抗性を有する品種を効率的に開発する育種技術の確立が求められています。 より病原力の高い線虫系統の選定 より強い抵抗性を有する品種を開発するためには、これまでの抵抗性育種事業で利用してきた線虫系統(島原やKa4)よりも病原力の高い線虫系統を用いて接種検定を行うことにより、より強い抵抗性個体を選抜する必要があります。そこで、東北から九州のマツの被害林分から186系統の線虫を収集し、抵抗性の苗木に接種することにより病原力の評価を行いました。その結果、より高い病原力を有する線虫系統が存在することがわかり、これを抵抗性品種の開発に活用することとしました(図1)。また、一連の調査の中で、接種直後の1~2週間の高温がより効果的な検定のために重要であることを解明しました。 より強い抵抗性品種の開発 新たに収集した病原力が高い複数の線虫系統を活用して、接種直後の高温が確保できる適切な時期に接種検定することにより、アカマツで9品種、クロマツで10品種のより強い抵抗性を有する品種を開発しました(表1)。また、従来のアカマツ抵抗品種のうち1品種について、より強い抵抗性を有するものとして評価しました。 抵抗性に関するDNAマーカーの開発 マツノザイセンチュウに対する抵抗性に関して、遺伝的に抵抗性を有する個体を効率的に選抜するためには、抵抗性に関係する遺伝子の情報が必要ですが、これまでこれらの遺伝子の数やゲノム上での位置については明らかにされていませんでした。今回、クロマツ抵抗性品種4クローンを交配した苗木について遺伝分析を行うことで、抵抗性に関係する遺伝子がゲノム上の少なくとも2ヶ所に存在することを明らかにしました。また、このうちの1ヶ所については、2つのDNAマーカーを利用することで抵抗性を有する個体の選抜が可能であることが明らかとなりました(図2)。さらに、今回開発した抵抗性クロマツの1品種については、DNAマーカー情報からも抵抗性を有する可能性が高いものと判定できました。 今後の取り組み 今後、本事業で開発した新たな育種技術を活用するとともに、DNAマーカーについて選抜精度の向上に向けた取り組みを進めることにより、より強い抵抗性を有する品種開発を促進するとともに、これらの開発品種の普及に努めていきます。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2018/documents/p42-43.pdf |
カテゴリ | 病害虫 育種 DNAマーカー 抵抗性 抵抗性品種 品種 品種開発 |