放牧草地の硝化抑制剤施用はN2O発生、硝酸流亡を減らし収量を増加させる

タイトル 放牧草地の硝化抑制剤施用はN2O発生、硝酸流亡を減らし収量を増加させる
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター
研究期間 2016~2017
研究担当者 Cai Yanjiang
秋山博子
発行年度 2017
要約 放牧草地において排せつされる家畜尿は温室効果ガスであるN2Oの発生および硝酸流亡を引き起こしている。硝化抑制剤(DCD)の施用はN2O発生削減および硝酸流亡低減に有効であり、また牧草収量を有意に増加させる。
キーワード 一酸化二窒素、硝酸流亡、硝化抑制剤、放牧草地、家畜尿
背景・ねらい 牧草草地において排せつされる家畜尿に含まれる窒素の一部は牧草の養分として吸収される。しかし、放牧家畜の尿には多くの窒素が含まれるため、牧草に吸収されない窒素は温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)の発生および硝酸流亡を引き起こすことが知られている。放牧草地の家畜糞尿からのN2O排出係数1のIPCCガイドライン2のデフォルト値3は施用窒素の1%(羊)および2%(牛)とされており、化学肥料の1%と比較して高いN2O排出係数となっている。また家畜糞尿中の窒素の約3割が硝酸流亡により失われていると考えられている。
一方、これらの環境汚染を低減できる可能性がある資材として、硝化抑制剤4(DCDおよびPD)やウレアーゼ阻害剤5(NBPT)、バイオ炭6の施用について、世界の様々な地域において圃場試験が行われている。圃場試験はこれらの資材の評価のための基本となるものであるが、圃場試験の結果は場所により大きくばらつくことが知られており、これらの資材の平均的な効果は明らかでない。このため、圃場試験データを収集して統計的解析を行い、これらの資材の施用による環境汚染低減および牧草収量増加について、世界における平均的な効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 家畜尿に関する世界の測定期間30日以上の放牧草地試験データを収集し統計解析(メタアナリシス)した結果、放牧草地における硝化抑制剤(DCD)の施用はN2O発生削減(-51%)および硝酸流亡低減(-46%)に有効である一方で、牧草の窒素吸収量(+14%)および収量を有意に増加させる(+7%)(図1)。またウレアーゼ阻害剤(NBPT)と硝化抑制剤(DCD)の同時施用も同様にこれらの環境汚染削減ならびに牧草の窒素吸収量と収量増加に有効である。
  2. 一方、異なる硝化抑制剤(PD)、ウレアーゼ阻害剤(NBPT)の単独施用、およびバイオ炭の施用によるN2O発生抑制効果は有意でなく、窒素吸収量および収量を増加させる効果も見られない。
成果の活用面・留意点
  1. 放牧草地のN2O発生削減および硝酸流亡低減ならびに収量増加に活用できる。
  2. 硝化抑制剤(PD)、ウレアーゼ阻害剤(NBPT)およびバイオ炭の施用の効果については、データ数が十分でないため、正確な評価を行うためにはより多くの圃場実験が必要である。
  3. DCDの環境影響ならびに植物吸収の可能性が指摘されており、現場の適用にあたってはこれらの点を明らかにする必要がある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2017/niaes17_s11.html
カテゴリ 肥料 ばら

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