タイトル | 天敵微生物を使ってシイタケ害虫の被害を防ぐ |
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担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
北島 博 向井 裕美 小坂 肇 阿部 正範 吉住 真理子 中野 昭雄 松本 哲夫 和南城 聡 多良 勇太 宮崎 潤二 石原 宏基 彌田 涼子 米倉 邦明 田辺 博司 |
発行年度 | 2019 |
要約 | シイタケの栽培には菌床栽培と原木栽培がありますが、どちらの栽培方法でも害虫が発生します。これらの害虫を、化学農薬ではなく、天敵微生物をつかって防除する方法を確立しました。 |
背景・ねらい | シイタケの栽培は、菌床栽培と原木栽培で行われますが、どちらの栽培方法でも害虫が発生します。シイタケを含む栽培きのこ類には自然食品、健康食品というイメージがあることから、害虫の防除に化学農薬の使用は避けられています。そこで、自然界に生息する天敵微生物を用いてシイタケ害虫を防除する方法を検討しました。その結果、製剤として販売されている天敵微生物のうち、天敵線虫、天敵細菌、天敵糸状菌の製剤がシイタケ害虫の防除に有効であることがわかりました。そして、これらの製剤をもちいた防除方法を確立しました。今後、これらの天敵微生物製剤がシイタケ栽培の現場で早期に使用できるように、制度的な手続きを進めていきます。 |
成果の内容・特徴 | シイタケ栽培で発生する害虫 シイタケ栽培は、おが粉と栄養剤をまぜたものにシイタケ菌を培養した“菌床”を使った菌床栽培と、丸太にシイタケ菌の種菌を接種して作る“ほだ木”を使った原木栽培で行われます。シイタケに害虫がつくことはあまり知られていないようですが、どちらの栽培方法でも多くの害虫が発生します(図1)。菌床栽培では、シイタケと菌床の食害や、虫体が商品に付着したまま販売される“異物混入”の発生が深刻です。原木栽培では、丸太に接種したシイタケ種菌や丸太を食害されて、ほだ木が作れなくなくなることに加え、異物混入の発生が深刻です。
シイタケ害虫に効果のある天敵微生物製剤 シイタケを含む栽培きのこ類には自然食品、健康食品というイメージがあることから、害虫の防除に化学農薬の使用は避けられています。一方、自然界に生息する天敵であれば害虫の防除に使用したいという、生産者の意向が高まっています。日本では、害虫の防除に有効な天敵微生物を製剤化した、天敵微生物製剤が販売されています。それらには、天敵線虫製剤、天敵細菌製剤、天敵糸状菌製剤などがあります。現在、シイタケ害虫に使用できるのは、シイタケオオヒロズコガに対する天敵細菌製剤とハラアカコブカミキリに対する天敵糸状菌製剤しかありません。そこで、これら以外の天敵微生物製剤のシイタケ害虫に対する防除効果を調べたところ、天敵線虫製剤が複数の害虫に有効であること、天敵細菌製剤がムラサキアツバやコクガにも有効であることがわかりました(表1)。 天敵線虫製剤の実証試験 実際のシイタケ栽培施設で、菌床栽培の害虫フタマタナガマドキノコバエの幼虫を防除する実証試験を行いました。その結果、天敵線虫製剤の施用によって幼虫の急激な増加を抑制できたことに加え、食害されるシイタケの割合を減らすことができました(図2)。また、食害が減少することによる収益の増加は、天敵線虫製剤の散布コストを上回ることもわかりました。 天敵微生物製剤の農薬登録 日本では、天敵微生物製剤といえども農薬として登録されないと生産者が使用できません。このため、本研究で効果が確認された天敵微生物製剤がシイタケ栽培の現場で早期に使用できるように、農薬登録の作業を進めていきます。 |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2019/documents/p18-19.pdf |
カテゴリ | 病害虫 害虫 コスト しいたけ シカ 農薬 防除 |