トドマツの天然更新を成功に導く秘訣

タイトル トドマツの天然更新を成功に導く秘訣
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 北尾 光俊
原山 尚徳
古家 直行
上村 章
石橋 聡
韓 慶民
発行年度 2019
要約 上木伐採によるトドマツ前生稚樹への障害は、急激な光強度の増大による光阻害が原因であることを明らかにしました。トドマツ前生稚樹の天然更新を促進するためには、保残木により光阻害を回避することが有効です。
背景・ねらい トドマツは耐陰性が高いため、暗い林内の環境でも天然更新した前生稚樹を数多く見かけます。北海道東部地域では、こうした前生稚樹を利用した低コストな再造林技術が期待されます。そこで冬季に上木伐採を行い、光環境の変化がトドマツ前生稚樹の葉の光合成活性に及ぼす影響を調べました。その結果、伐採率が高く明るい林内ほど、光阻害と呼ばれる光合成活性の低下が強く生じている事がわかりました。さらに光阻害にともなう落葉と相まって、その後のトドマツの成長に負の影響が出ることが明らかになりました。トドマツの天然更新を利用した再造林を促進するためには、保残木として上木を一部残し、強い光から前生稚樹を守ることが有効です。
成果の内容・特徴
トドマツ人工林内の前生稚樹を活用する施業試験
 トドマツ人工林内のトドマツ前生稚樹を活用し、天然更新を図る施業法を開発するため、北海道森林管理局が根釧西部森林管理署標茶国有林に設定した試験地で調査を行いました。試験地は2014年に設定され、2015年10月、2016年1月に異なる伐採率(0, 33, 50, 66, 100%)で上木の伐採が行われました。2016年5月に現地を調査したところ、伐採率が66%以下の試験地では稚樹が健全に生存していたのに対し、皆伐区(伐採率100%)ではほとんどの前生稚樹で葉が褐変・落葉し、枯死した個体も多くみられました(図1)。当年秋の調査によると、二つの皆伐区の稚樹(樹高30cm以上)の生存率は2割程度でした(伐倒集材による損壊枯死を含む)。
上木伐採後の光阻害と成長低下
 トドマツ前生稚樹の枯死原因を明らかにするため、上木伐採後の翌春に、日射量と伐採前に展開した稚樹の葉(伐採前展開葉)の光合成活性を調べました。その結果、伐採率が高く明るい林内ほど光合成活性が低下し、光阻害が増大していました(図2)。光阻害とは、「必要以上の光が当たることで生じる光合成活性の低下」と定義されます。一方で、幹の水を通す能力は維持されており、枯死の原因は冬季の乾燥害ではありませんでした。つまり、トドマツ前生稚樹の葉の褐変や落葉の原因は、暗い環境から明るい環境に急劇に変わったことによる「光阻害」であると考えられます。また、光阻害による伐採前展開葉の障害により、伐採後1年目に伸長する枝の成長も低下することがわかりました(図3)。さらに伐採前展開葉が光阻害の影響で早めに落葉したことで、伐採後2年目に伸長する枝の成長も抑制されることがわかりました。つまり、光阻害を受けると、枯死に至らない場合でも、成長への影響が2年間続く事になります。
トドマツ前生稚樹の天然更新につながる保残木施業
 トドマツの主伐後の日射量と前生稚樹の生存率の関係を調べた結果、連続して直射日光が当たらないようにすること、日影になる時間を長くすることが生存率を高めるために有効であることがわかりました(図4)。さらに生存率だけでなく、直射日光を遮ることで成長量も改善することがわかっています。これらのことから、皆伐面に保残木を配置することがトドマツ稚樹の天然更新に有効な施業方法として考えられました。
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2019/documents/p20-21.pdf
カテゴリ 乾燥 低コスト

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