新たな森林の有効活用に向けた課題と解決策の提示

タイトル 新たな森林の有効活用に向けた課題と解決策の提示
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 平野 悠一郎
発行年度 2019
要約 森林への多様な要求・価値を対立させることなく効果的・持続的に満たすには、新興のスポーツ・レジャー利用側の森林管理への貢献と、森林経営側のリスクを軽減する制度構築が必要となることを明らかにしました。
背景・ねらい 近年、世界各地の森林は、林産物獲得や生態系保全のみならず、人々が楽しみ健康を維持する場として利用されています。しかし、新興のマウンテンバイクやトレイルランニングは、ウォーキング等の従来の利用者から危険視され、森林・山道の所有・管理者からは事故や土地劣化を懸念されてきました。日本のマウンテンバイカーやトレイルランナーの有志は、森林・山道の整備や経済効果を伴うイベント等、所有・管理者を含む地域のメリットとなる活動を行い、この対立解消を進めています。一方、欧米では、法令や契約等で各利用の持続性や権利・義務を担保し、利用者間の対立や事故・土地劣化に伴う森林経営側のリスクを軽減することに成功しています。
成果の内容・特徴
新たな要求を含めた森林利用の多様化は対立を伴う
近年の日本では、マウンテンバイクやトレイルランニング等、リフレッシュや健康維持等を目的としたスポーツの場として、森林や林内に続く山道を利用したいと思う人々が増加してきました。しかし、これらの新興利用は、すぐに厳しい対立に直面しました。先行ユーザーである登山者ほか林内歩行者は、桁違いのスピードで走るマウンテンバイカーやトレイルランナーを「危ない」と問題視し、林地・道の所有者や管理者は、現実に事故が起った場合、訴訟等を通じて自らの安全管理責任が問われるのではないか、また、大勢が走ることで地表や路面が劣化するのではないかと懸念します。山村等の付近に暮らす人々も、これらの利用者が増えることで、自らの生活に踏み込まれる抵抗感を少なからず感じ、自然保護を重視する人々にとっては、動植物の生息環境への影響等が心配になります(図1)。
利用者側の地域貢献は日本での対立解消の即効薬かつ必要条件
 こうした対立に直面したマウンテンバイカーやトレイルランナーは、気持ちよく利用できる場所を確保するために、「相手側の役に立つ」活動を各地で展開するようになりました。すなわち、魅力的な森林・山道を抱えつつも、過疎・高齢化に悩む山村等において、森林・山道の持続的な整備を自主的に行い、地域に経済効果をもたらすイベント(大会・ツアー等)を開催し、或いは清掃・祭礼・農作業・集落運営等に積極的に携わることで、地域活性化に貢献していくというものでした(図2)。その結果、彼らは地域の関係主体からの好印象や信頼を得て、安全面・環境面に配慮したルールを守りながら、当地での利用を楽しむことができるようになっています。
森林経営側の各種リスク軽減のための制度構築という長期的な課題
 しかし、これらの利用者側の貢献の成果を、長く保障するための制度が日本には存在していません。その結果、所有・管理者を含めた森林経営側は、事故等に伴う安全管理責任を問われるリスクが軽減されないという問題が生じています。このために、利用者側が整備に貢献したいと思っても、森林・山道への立ち入り自体に難色が示されることもあります。
 この点、アメリカ、イギリス、ニュージーランド等では、関連の法律や権利関係を通じて、利用者への許可の仕組みや利用の権利・義務を明確化し、また利用者代表組織を通じた整備技術の普及、及び保険・事故補償制度の整備等を進めることで、持続的な利用の担保と、森林経営側の安全管理責任の明示・軽減が図られています(図3)。日本でも、将来に渡って効果的な利用を維持していくためには、こうした制度構築が求められるでしょう。
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2019/documents/p26-27.pdf
カテゴリ 安全管理 経営管理

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる