樹種のバリエーション拡大と耐火基準クリアで、国産CLTの普及を促進

タイトル 樹種のバリエーション拡大と耐火基準クリアで、国産CLTの普及を促進
担当機関 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 宮武 敦
上川 大輔
発行年度 2019
要約 CLT の強度データを国土交通省指定の強度データに反映させるとともに CLT に 2 時間の火災に耐える性能を付与する技術を開発しました。これらの成果は、CLT 建築物の普及と地域材の市場拡大に寄与します。
背景・ねらい 平成30年に「CLTパネル工法」に関する建築基準関連法規が制定され、建築物の構造設計や防耐火設計において守るべき基準が示されましたが、それらの基準を守るために必要な技術の情報はまだ整備途上です。そのような中、私たちは、様々な樹種を用いて製造したCLTの強度データを収集し、その成果は国土交通省が指定するCLTの基準強度に反映され、樹種に応じた強度性能を用いた合理的な構造設計を可能にしました。また、壁用CLTに2時間の耐火性能を付与する技術を開発し、国土交通大臣の認定を取得しました。この結果、建物の壁に要求される最高の防耐火設計が可能になり、建物の高さに対する制限はなくなりました。
成果の内容・特徴
ヒノキやカラマツなど地域材を用いたCLTの強度性能把握
 平成25年に制定された直交集成板の日本農林規格にはCLTの製造に用いてよい樹種として27の樹種が規定されましたが、平成28年に制定された「CLTパネル工法」に関する建築基準関連告示では、いずれの樹種で製造したCLTもスギと同等の強度性能とみなされていました。そこで、スギに加えて、ヒノキ、カラマツ、トドマツなどの地域材を用いて製造したCLTの強度データを収集してきました。その結果、樹種に応じて強度性能が異なること(図1)、また、それらの樹種を用いたCLTの強度性能が推定できることが明らかになりました。これらの成果は、国土交通省が指定するCLTの基準強度に反映され、樹種に応じた強度性能で設計することが可能になりました(図2)。スギの強度性能を補うためのヒノキやカラマツなどを複合した製品の開発や利用技術開発が進めば、製品の仕様のバリエーションが増え、それぞれの性能を活かした、より合理的な設計が可能になります。このことは、CLTの普及促進とともに、地域材の生産拡大につながると期待されます。
CLT構造部材の火災安全性を確保するための技術開発と実用化
 CLT構造部材を中高層建築に用いるには、2時間の火災に耐える性能(2時間耐火性能)を耐火試験により確認し、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。CLT構造の外壁で2時間耐火の性能を持つ認定品はなく、中高層建築物へのCLT利用のネックとなっていました。そこで、CLTの表面を覆う耐火被覆や取り付け方を検証する実験を行い(図3)、適切な厚みの強化せっこうボードや軽量気泡コンクリートで被覆することで、火災が2時間継続しても内部のCLTは焦げず十分な強さを保ち続ける性能を持つCLT壁部材を開発しました。この成果をもとに、CLTを使用した外壁及び間仕切壁の2時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得しました(申請者:日本CLT協会)。荷重支持部にCLTを用いた外壁は日本初の認定となります。
 今回の認定取得により、防火上は階数の制限なくCLT構造の外壁を建築物に用いることが可能となりました。また、CLT部材の接合部や耐火集成材との取合い部分、コンセント周囲等の弱点部分の火災安全性も確認しています。これらの成果と既認定のCLT床等の耐火構造とを組み合わせることにより、建物全体にCLTを使用した中高層建築物が実現できます。
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2019/documents/p32-33.pdf
カテゴリ 生産拡大

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