サトウキビの新しい育種素材となるサトウキビとエリアンサスの属間雑種の作出

タイトル サトウキビの新しい育種素材となるサトウキビとエリアンサスの属間雑種の作出
担当機関 (国研)国際農林水産業研究センター
研究期間 2011~2020
研究担当者 寺島 義文
高木 洋子
Babil Pachakkil
近江戸 伸子
蝦名 真澄
伊禮 信
林 久喜
発行年度 2018
要約 サトウキビ普及品種とその近縁遺伝資源エリアンサスを交配して作出した属間雑種は、エリアンサスの染色体数が系統毎に異なり、農業特性に多様な変異がある。サトウキビ育種での遺伝的基盤拡大や新規特性の導入に向けた新しい育種素材として利用できる。
キーワード サトウキビ, エリアンサス, 属間交配, 属間雑種, 育種素材
背景・ねらい サトウキビは、世界の食料・エネルギー生産にとって重要な作物であるが、育種による生産性改良の停滞が問題となっており、未利用の遺伝資源を利用した遺伝的基盤の拡大や新規特性の導入が必要となっている。サトウキビの近縁属遺伝資源であるエリアンサス(Erianthus arundinaceus)は、バイオマス生産性が高く、干ばつ等の不良な環境への適応性に優れるため、サトウキビの更なる改良に向けた遺伝資源として期待できる。そこで、サトウキビ改良の新たな可能性を拓くため、世界的にも報告例が少ないサトウキビ普及品種(Sacchrum spp hybrid)とエリアンサスの属間雑種を作出し、その効果的な育種利用の基盤となる細胞遺伝学的特性や農業特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. サトウキビ普及品種(2n=110)とエリアンサス(2n=60)の属間交配で獲得した実生個体から5S rDNAマーカーで39系統、形態形質で2系統の属間雑種を選定した(図1)。
  2. 属間雑種には両親それぞれの半数の染色体が遺伝し、サトウキビの染色体数はほぼ安定(53~55本)であるが、エリアンサスの染色体数は系統毎に大きな変異があり(18~29本)、5SrDNA遺伝子が座乗するエリアンサス染色体の脱落により、5SrDNAマーカーではスクリーニングされない属間雑種がある(図1、図2a)。
  3. 属間雑種集団には、同じ茎の芽子(各節の芽)で増殖した栄養系個体間でエリアンサス染色体数が安定している系統と変異が見られる系統が出現する(図2b)。
  4. 属間雑種のDNA量とエリアンサス染色体数には高い正の相関関係が有り、DNA量からエリアンサス染色体数を大まかに推定できる(R2=0.85**)(図3)。
  5. 属間雑種の多くは両親より生育が劣る雑種弱勢を示し、ショ糖含率や繊維分の集団平均は両親の中間程度となるが、集団内の変異は大きく、母本としたサトウキビと同程度の乾物重やショ糖含率となる系統も存在する(図1、表1)。
  6. 属間雑種のエリアンサス染色体数と乾物重や茎径には正の相関関係があり、エリアンサスの染色体数が多い系統ほど生育が優れる傾向がある(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 作出した属間雑種は、サトウキビの遺伝的基盤の拡大、生産性や不良環境適応性などの更なる改良に向けた新しい育種素材として活用できる。また、属間雑種の細胞遺伝学的特性や農業特性の情報は、育種利用のための基礎情報として利用できる。
  2. 属間雑種のスクリーニングでは、5SrDNAマーカーのみではスクリーニングできない系統が出現するため、他のDNAマーカーを組み合わせてスクリーニングする必要がある。
  3. 属間雑種の一部の系統では、栄養系個体間でエリアンサス染色体数が異なるため、DNA量測定によるエリアンサス染色体数のモニタリングを行うなど系統の維持に注意が必要である。
オリジナルURL https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_b06
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_b06
カテゴリ 育種 遺伝資源 さとうきび DNAマーカー 品種 モニタリング

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