飼育試験によるヒラメ放流魚の再生産能力の検証

タイトル 飼育試験によるヒラメ放流魚の再生産能力の検証
担当機関 神奈川県水産技術センター
研究期間 2015~2017
研究担当者 相川 英明
発行年度 2018
要約 放流魚の親魚としての再生産能力を検証するため飼育試験を実施した。雌親魚を共通として、雄親魚を放流魚あるいは天然魚で交配して得たふ化仔魚を同一水槽に収容して飼育した。その結果、天然魚(雌)×放流魚(雄)のF1個体と天然魚同士のF1個体の生残率、成長には有意な差は認められなかったことから、放流魚の親魚としての再生産能力も天然魚と差がないものと考えられた。
背景・ねらい ヒラメは、本県の沿岸漁業にとってマダイとともに最重要魚種の一つである。漁業者からも種苗放流による資源増大が強く望まれており、本県沿岸には毎年約20万尾の種苗が放流されている。天然のヒラメ資源が増加傾向にある近年においても、漁獲物の一割弱は放流魚が占めており、冬~春の産卵期には、その一部から排精や排卵が認められるため、本県周辺海域でのヒラメの再生産に放流魚が関与している可能性が高いことが推察される。しかし、放流魚が再生産に関与した場合の稚魚の生残率などの諸特性を天然魚と比較した事例は今までない。そこで、本研究では県下で漁獲された天然魚同士および天然魚と放流魚の交配によるF1個体を混合飼育して、両者の生物特性の比較から、放流魚の親魚としての再生産能力を検証した。なお、天然海域においては、放流魚同士の交配よりも、片親のみが放流魚で天然魚と交配する頻度のほうが高いと推察されるため、上記のような組合せで比較した。
成果の内容・特徴 (1)3尾の雌親魚にそれぞれ3尾の天然、放流の雄親魚を交配してふ化魚を得て飼育試験を3回行った。生残率および平均全長は飼育試験ごとに結果が異なったが、1~3回目を通して生残率および平均全長を比較すると、天然魚(雌)×放流魚(雄)のF1個体と天然魚同士のF1個体の間には有意差は認められなかった(Mann-Whitney. U 検定(P>0.05))ことから、雄の場合、親魚としての再生産能力は放流魚と天然魚には差がないものと考えられた。
 (2)親子鑑定の結果、F1個体の体色異常出現率は特定の親魚の組合せで高くなったことから、体色異常の発生に遺伝的要因の関与が示唆された。また、天然魚の雄親の中には人工環境下にありながら正常個体のみを生産するものが確認された(3回目の試験)。
成果の活用面・留意点 (1)ヒラメの稚魚の形質の中には雄親魚に比べ、雌親魚の遺伝的影響を強く受ける事例があるので、ヒラメ稚魚の成長や生残も雌親魚の遺伝的影響が強いことも推察される。今後は放流魚の雌についても同様の試験を行うことが必要と考えられる。 
(2)本研究の親子鑑定手法による親魚の選抜で、ヒラメ種苗生産の過程で体色異常魚の出現が防止できる可能性が示された。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8055&YEAR=2018
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