タイトル | 黒潮流路変動に影響されるマサバ太平洋系群の加入量 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 東北区水産研究所 |
研究期間 | 2016~2017 |
研究担当者 |
金子 仁 奥西 武 長谷川大介 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 海況予測システム(FRA-ROMS)の再解析値(水温、流動環境の再現値)を用いてマサバ太平洋系群の2000年代の冬季産卵場水温・仔魚初期経験水温を見積り、マサバの加入量変動との関係を調べた。黒潮流路が直線的で産卵場に近傍となる年は、産卵場周辺の春季表面水温が高く、再生産成功率が高くなっており、加入過程において春季の仔魚経験水温の影響を強く受けていることが明らかになった。 |
背景・ねらい | マサバ太平洋系群は、我が国の主要な浮魚資源の1つである。1970年代~1990年代の加入量変動は、主な産卵場である伊豆諸島周辺の冬季海面水温変動に大きな影響を受けていたことが知られている。2000年代には、親潮の勢力が1990年代に比べ弱まっていること等、マサバをとりまく環境は十年規模でも大きく変化していると考えられる。近年のマサバ資源量の変動要因を理解するには、2000 年以降の黒潮流路変動や、それに伴う水温変動等の環境要因がマサバの加入変動に与えた影響を明らかにすることが重要である。 |
成果の内容・特徴 | マサバの加入量変動と海洋環境の関係を調べるため、海況予測システム(FRA-ROMS)の再解析値を用いて冬季産卵場水温・仔魚初期経験水温を見積もった。これらを説明変数として、2000年代のマサバの再生産成功率を表現するモデルを構築した。そのモデルから2000年代の加入量変動要因として、冬季産卵場(負相関: 低水温ほど高加入)および春季の仔魚経験水温(正相関:高水温ほど高加入)は重要な環境因子であり、仔魚経験水温が加入変動に強い影響を与えていることが分かった(図1)。仔魚経験水温が高水温の場合は、高成長を通じ高加入、冬季産卵場が低水温の場合は、良好な卵質形成の条件となり高加入をもたらしていると考えられた。また、親魚が産卵期を迎える3月に黒潮が非大蛇行接岸流路をとる場合は再生産成功率が高く、伊豆諸島を迂回する流路の場合は再生産成功率が低~中程度であったことが示された(図2)。また、迂回流路の際にも、黒潮内側域沿岸付近の冬季表面水温が相対的に高い年はより再生産成功率が低くなることが分かった。 |
成果の活用面・留意点 | 海況予測システム(FRA-ROMS)の再解析値からマサバ加入量の指標となる仔魚経験水温を見積もることが可能となり、マサバ太平洋群の加入量変動の解明に寄与する。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8078&YEAR=2018 |
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