タイトル | 気候変動が瀬戸内海の藻場に及ぼす影響―RCPシナリオに基づいた将来予測― |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所 |
研究期間 | 2013~2017 |
研究担当者 |
吉田吾郎 島袋寛盛 堀正和 清本節夫 門田立 邵花梅 中川 雅弘 種子田雄 吉村拓 村瀬昇 野田幹雄 郭新宇 吉江直樹 于暁杰 竹中彰一 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 温暖化緩和策の実施を前提としたIPCCによる気候変動予測シナリオ(RCPシナリオ)に基づき、瀬戸内海の水温上昇とそれを反映した藻場分布の将来予測を行った。最大排出量シナリオRCP8.5では2090年代には現在より水温は4-6℃上昇し、コンブ目藻類(クロメ)による藻場は全域で消失した。一方、排出量の最も低いシナリオRCP2.6では水温上昇は1-3℃にとどまり、クロメの藻場は広範囲に残存した。 |
背景・ねらい | 暖流の影響を受ける西日本の外海沿岸域では、水温上昇を背景とした藻場の消失・衰退(磯焼け)が急速に進行し、磯根漁業をはじめとする漁場の生産力の低下が急速に進んでいる。瀬戸内海では未だ大規模な磯焼けの報告はないが、水温は長期的な上昇傾向にあり、今後も温暖化に伴う上昇が予想される。したがって、外海域と同様の藻場の衰退と藻場に依拠した漁業への影響が、将来的に顕著化することが危惧される。気候変動の影響評価と適応策の基盤構築のため、瀬戸内海の地理的スケールに合致した高解像度の将来予測が求められる。 |
成果の内容・特徴 | 本研究は愛媛大学沿岸環境科学研究センター、愛媛県農林水産研究所水産研究センター、水産大学校、西海区水産研究所との共同研究で実施した。現地調査と室内実験により、水温環境の変化と藻場の変化過程との関係、藻場の主要海藻の高温耐性、植食性魚類アイゴの採食生態等について明らかにした。瀬戸内海の物理環境を高解像度(1kmメッシュ)で再現した黒潮―瀬戸内海流動モデルを構築し、過去20年の瀬戸内海・水道部(豊後水道・紀伊水道)・黒潮沿岸域の水温環境を再現して藻場の現状分布と照合した。これらの全ての結果から、藻場の成立の可否を規定する水温条件を決定した。構築した黒潮―瀬戸内海流動モデルにより、シナリオRCP2.6、8.5に基づいて該当海域の2050年代、2090年代の水温環境を予測し、前出の藻場の成立を規定する水温条件を適用して藻場の分布予測を行った。 |
成果の活用面・留意点 | 温暖化進行後の水産業における適応策・技術のオプションをあらかじめ用意しておくことは、今後不可欠であり、本成果はそのための基盤的情報となると考える。藻場で営まれる漁業への影響の評価への活用のみならず、藻場が残存する場所の環境特性(流動条件や河川流入等)を明らかにすること等により、漁場保全における施策・技術につなげることもできる。また、藻場のみならず、藻類や貝類養殖への影響評価や温暖化進行後の養殖適種・適地選定等についても活用が想定される。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8095&YEAR=2018 |
カテゴリ | 高温耐性 |