タイトル |
アユのエドワジエラ・イクタルリ感染と友釣りでの釣られやすさの関係 |
担当機関 |
(国研)水産研究・教育機構 中央水産研究所 |
研究期間 |
2016~2016 |
研究担当者 |
坪井潤一
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発行年度 |
2018 |
要約 |
友釣りおよび投網を用いて879個体のアユを捕獲しエドワジエラ・イクタルリのPCR保菌検査を行った。週の平均水温が高いほど陽性率が高く、最も陽性率の高かった7/31 - 8/6には、週の平均水温が25度以上を記録した。同期間中、投網で捕獲されたアユの陽性率は20.4 %であったが、友釣り個体では陽性個体は確認されなかった。エドワジエラ・イクタルリ感染は友釣りでの漁獲不振を招く可能性が示唆された。
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背景・ねらい |
アユは内水面の漁業・遊漁における最重要種であり、主に友釣りによって漁獲されている。魚病の蔓延によって健康でなくなったアユは斃死しないまでも、縄張り形成能が低下し漁獲不振を招く。エドワジエラ・イクタルリEdwardsiella ictaluri はグラム陰性短桿菌の一つで、アユでは2007年に初めて感染が確認されて以来、アユ漁業に深刻な影響を及ぼしている。本研究では、定期的にアユのサンプリングを行い、エドワジエラ・イクタルリ発症と友釣りでの漁獲不振との関係について調査した。
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成果の内容・特徴 |
2016年7月13日から9月2日までの8週にわたり、那珂川中流域(栃木県那須烏山市)において、友釣りおよび投網を用いてアユの捕獲を行なった。調査期間中は、データロガーを用い1時間ごとに水温を記録した。調査期間終了後、捕獲された879個体について標準体長ならびに体重を測定した。個体ごとに腎臓を摘出し、エドワジエラ・イクタルリの保菌検査に供した。PCR法はSakai et al.(2009)によって報告されたエドワジエラ・イクタルリのfimbrial 遺伝子に特異的なPCRプライマーセットを用いた。 アユの標準体長は94 - 189 mmの範囲であった。全期間を通してのエドワジエラ・イクタルリ陽性率(陽性個体数 / 検査個体数)は、5.2%であった(46 / 879個体)。週の平均水温が高いほどアユのエドワジエラ・イクタルリ陽性率が高く(表1)、最も陽性率の高かった調査第4週(7/31-8/6)には、週の平均水温は25℃以上を記録した(図1)。第4週に投網で捕獲されたアユの陽性率は20.4%(11/54個体)であったが、同時期の友釣り群では陽性個体は確認されなかった(0/36個体, 図2)。この結果、4週目では、エドワジエラ・イクタルリ陽性個体は、友釣りで釣られにくいことが明らかになった。
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成果の活用面・留意点 |
アユのエドワジエラ・イクタルリ感染は水温依存であり、水温が25度を上回ると、友釣りで釣られにくくなる可能性が示唆された。気象庁によると、1990年以降、日本の平均気温が平年以上となる年が頻発しており、夜間の最低気温が25 度以上となる熱帯夜が増えている。今後、エドワジエラ・イクタルリによるアユ不漁のリスクは上昇する可能性がある。
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研究内容 |
http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8142&YEAR=2018
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カテゴリ |
ICT
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