タイトル | 津波に対する粘り強い防波堤構造の開発 |
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担当機関 | (国研)水産研究・教育機構 水産工学研究所 |
研究期間 | 2015 |
研究担当者 |
大村 智宏 |
発行年度 | 2018 |
要約 | 漁港の防波堤が大規模な津波時にも倒壊しなければ、漁村への流入量や水勢が減少し漁村の被害を減らすことができる。そのために防波堤の基礎に積まれた石材(マウンド)の崩壊を防ぐ必要があるが、マウンドそのものの強化と組みあわせて講ずべき対策として、防波堤上部の構造を適切に設計にすることによって防波堤からマウンドへ流下する流れを制御することを検討し、実験で有効性を検証した。 |
背景・ねらい | 漁港の防波堤は、波浪などから漁船や漁村を守る重要な施設である。しかし、東日本大震災では、巨大津波によって多くの防波堤が倒壊した(図1)。 震災を教訓として、数十年から百数十年の間隔で発生する津波(「設計津波」といい、地域によってその高さが10mを超える場合もある)に耐えられる防波堤の設計方法が示されたが、数百年から千年に一度のような非常に大きな津波に対応し、より倒れにくく、全壊までの時間を延ばすことができる「粘り強い」防波堤が求められている。そこで、模型実験を行い、粘り強い防波堤の開発に取り組んだ。 |
成果の内容・特徴 | 東日本大震災では、防波堤を越える非常に大きな津波が発生し、防波堤の港内側で石を積んだ基礎(マウンド)が剥がされ、その下の地盤がえぐりとられて多数の防波堤が倒れた。そこで、マウンドを安定に保つため、表面をブロックで覆うことを考え(被覆ブロック)、模型実験によりその有効性を確かめた。 模型実験では、津波がコンクリートの堤体(ていたい)を越え、その裏側へ落水する様子を模型実験で再現した(図2)。被覆ブロックは、落水からマウンドを守るが、強い落水が直撃すると剥がれて流失する。 防波堤の上には突起状の構造(パラペット)があり、台風時などの高波が防波堤を越えることを防いでいる。これを応用して落水の勢いを減らすことができれば、被覆ブロックは剥がれにくくなると考え、パラペットの大きさを変えた防波堤の模型を用意して実験を行った。 その結果、パラペット幅を広くすると落水が被覆ブロックを直撃しにくくなり、防波堤は倒れず安定を保つことがわかった。パラペット幅を堤体の幅の30%以上にすると、パラペット無しの場合に比べて、15%高い津波に対しても、安定が保たれた(図3)。 被覆ブロックと適切な大きさのパラペットを組み合わせることで、被覆ブロックを重くする対策や、港内側のマウンドをかさ上げする対策よりも低コストで粘り強い防波堤が実現する。 |
成果の活用面・留意点 | 今後も実験を重ね知見を一般化していくことで防災・減災に資する防波堤整備への貢献が期待される。 |
研究内容 | http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8166&YEAR=2018 |
カテゴリ | 低コスト |