安定同位体比による日本海陸棚海域における食物網構造の解析

タイトル 安定同位体比による日本海陸棚海域における食物網構造の解析
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 日本海区水産研究所
研究期間 2016~2016
研究担当者 木暮陽一
森本晴之
後藤常夫
発行年度 2018
要約 日本海における主要漁場の一つである陸棚浅海域の食物網構造を把握するため、能登半島西岸陸棚海域より主要ベントスとプランクトンの採集を行い、炭素・窒素安定同位体比分析に供した。その結果、海域生態系の主要餌料源は海産有機物であること、また、腐肉食性ベントスが漂泳生態系から底生生態系への有機物移送に重要な役割を果たすこと等が示唆された。
背景・ねらい 日本海沿岸陸棚底には有用水産資源を含む多様な生物が生息している。本海域の漁場環境について、その現状把握や経時的変化に関する知見を集積することは、漁場管理を適切に実施するための基本情報として重要である。そこで本研究では、海域の餌料供給源と食物網構造について安定同位体比を用いて化学的に解析することを目的とする。
成果の内容・特徴  2016年5月から6月に、能登半島西岸の陸棚に位置する水深89-105mの調査海域より、水中懸濁有機物、海底堆積有機物、動物プランクトン、底生動物を採集し、質量分析計による炭素及び窒素安定同位体比の測定に供した(図1)。測定結果を炭素及び窒素安定同位体比を軸とする2次元座標にプロットした結果(図2)、以下のことが明らかとなった。すなわち、(1)堆積物中の有機物は海産有機物で占有されていた、(2)サルパや尾虫類は海産有機物を餌料とする1次消費者として同じ栄養段階にあった、(3)カイアイシ類には1次消費者と2次消費者が混在した、(4)ヤムシ類は2次消費者であった、(5)腐肉食性の貝類が、沈降したサルパや尾虫類を捕食する栄養段階を占めた、(6)底生動物のうち、ヤドカリ類等の大型甲殻類が海域食物網栄養段階の最上位に位置した。
   これらの結果から、海域において、特に腐肉食性底生動物が漂泳生態系の大型プランクトンを底生生態系食物網に取り込む重要な役割を担っていると推察された。
成果の活用面・留意点  国の施策や社会的ニーズとして、沿岸漁場の持続的な利活用と環境保全がますます重要になっているが、そのためには、当該海域生態系の解明が必要である。本研究成では化学分析により定量的な食物網構造を明かにしており、得られた結果は生態系解明に資するものである。
   また、近年、沿岸域では、サルパや尾虫類由来と考えられるゼラチン質プランクトンの沈降物が漁場汚損物質となっており、漁業者から対策を求められている。本研究成果はこのような汚損物質の発生や消滅過程を検討する際の基礎的資料として有用である。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8171&YEAR=2018
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