震災後のエゾアワビ新規加入群の低迷要因

タイトル 震災後のエゾアワビ新規加入群の低迷要因
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 東北区水産研究所
研究期間 2011~2017
研究担当者 高見秀輝
発行年度 2018
要約 東日本大震災以降、大きな撹乱を受けた岩礁藻場でエゾアワビ新規加入群が継続して低迷していることが明らかとなった。この原因として、幼生の着底場、稚貝の成育場となる無節サンゴモ群落が砂泥の堆積や大型海藻群落の拡大によって縮小したことが推測された。エゾアワビの住み場変化を保障する多様な海藻群落構造の維持がエゾアワビの加入にとって不可欠な要因の一つであると示唆された。
背景・ねらい 東日本大震災以降、地震・津波によって大きな撹乱を受けた岩礁藻場ではエゾアワビ新規加入群が継続して低迷している。本課題では震災を起因とした環境変化に焦点を当て、これらの低迷要因を推定した。
成果の内容・特徴 宮城県牡鹿半島泊浜において、震災前後の2007~2017年にかけてエゾアワビ当歳貝の加入密度を調査した結果、震災後に継続して低下していることが明らかとなった(図1)。この場所では、震災前には水深約2~4 mまで大型褐藻のアラメが優占し、それ以深では無節サンゴモが優占していた。震災前、エゾアワビ浮遊幼生はサンゴモ域で稚貝に着底・変態し、その後成長に伴い大型褐藻群落へと稚貝の住み場が変化した。一方、キタムラサキウニでは稚ウニから成体までがサンゴモ域に多く生息していた。震災後、アラメ群落中の藻体現存量は震災前と変わらなかったが、サンゴモ域では、多くの転石が反転し岩盤には多くの亀裂や損傷が見られた。また、震災から約1年間にわたりサンゴモ域で砂泥が堆積し、当歳貝(2011年級群)の加入密度が低下した。一方、泊浜と同じく牡鹿半島東岸に位置する寄磯では、砂泥の堆積がほとんど見られず、2011年級群の当歳時加入密度は泊浜より有意に高かった(図2)。サンゴモ域に生息していたウニの生息密度は、震災直後から大きく減少した。その後、サンゴモ域では大型海藻幼体の加入が見られるようになり、震災から3年後にはアラメが優占する海藻群落が形成された(図3)。このような急激な大型海藻群落の拡大は、主要な植食動物であるキタムラサキウニの大規模な流失によるものと考えられた。以上から、震災後約1年間はエゾアワビの着底・育成場となる無節サンゴモ域での砂泥の堆積、それ以降は大型海藻群落の繁茂よる無節サンゴモ域の縮小により、稚貝の新規加入が制限された可能性が考えられ、エゾアワビの住み場変化を保障する多様な海藻群落構造の維持が本種の加入にとって重要であると考えられた。
成果の活用面・留意点 当歳貝加入密度と親貝密度の関係には震災前後で有意差は認められなかった。震災影響は場所によって異なり、本調査場所は影響が比較的大きい海域である。津波の引き波による陸域からの砂泥の流入・堆積が大きかった場所では、震災後、エゾアワビの新規加入密度が低い傾向にあった。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8193&YEAR=2018
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