麻痺性貝毒によるナミガイの毒化

タイトル 麻痺性貝毒によるナミガイの毒化
担当機関 (国研)水産研究・教育機構 中央水産研究所
研究期間
研究担当者
発行年度 2018
要約 ナミガイPanopea japonica(市場名:白ミル)をAlexandrium tamarenseが出現した海域で入手し、個体別、部位別の麻痺性貝毒成分蓄積をHPLC分析により調べた。軟体部全体では最大で99.7 MU/gに相当する毒量を蓄積し、一般的に食用とする水管筋肉部も毒成分の蓄積が認められた。中腸腺は1個体でも致死量に匹敵する毒成分が蓄積しており、本種も毒化モニタリングが必要と考えられた。
背景・ねらい 2018年春季は瀬戸内海東部の多くの海域で麻痺性貝毒原因藻が出現し、多くの種類の二枚貝が毒化した。ナミガイは瀬戸内海でも重要な漁業対象の一つであるが、これまでナミガイについては毒化の詳細について報告例がないと思われる。本報告では、A. tamarenseが出現した海域でナミガイを入手し、個体別、部位別に麻痺性貝毒成分の蓄積を調べ、本種における貝毒モニタリングの必要性について明らかにした。
成果の内容・特徴 (方法)
2018年3月28~30日に採取したナミガイを、水管部筋肉、水管部外皮、中腸腺、その他の内臓部に分別したのち、等量の0.1M塩酸を添加してポリトロンホモジナイザーで細切し、10,000G、10分間の遠心分離により抽出試料を得た。各部位より得た抽出試料は、Sep-pak C18および限外ろ過カートリッジにより清澄化し、HPLC法によりPSP成分を分析し、各成分の比毒性値より部位毎のマウス毒力を換算した。 
(結果)
ナミガイでは、すべての部位からPSP成分が検出され、その濃度は、その他内臓部>中腸線>水管筋肉部の順で高かった(表1)。各部位のマウス毒力(HPLC分析値からの換算値)と重量から軟体部の全体の毒力を計算すると、65.6~99.7 MU/gの毒力となり、ナミガイも規制値を大きく上回り毒化することが明らかとなった(表1)。部位別の毒力は、その他内臓部で234.9~542.0 MU/g、中腸線で150.0~231.6 MU/g、水管筋肉部で4.8~12.0 MU/gとなり、すべての部位が規制値を超えるレベルの毒力であった(表1)。蓄積した毒量の部位別の分布割合では、中腸線に58%、その他内臓に35%、水管筋肉部に6%の分布となっていた。各部位に蓄積した毒成分をマウス毒力単位(MU)に換算すると、中腸線では1個体あたり7,864 ~11,350MUとなった(表2)。 
(考察)
麻痺性貝毒原因藻の出現によりナミガイも高毒化し、食用とする水管筋肉部にも毒成分を蓄積することから、本種は貝毒モニタリングの対象とすべきである。さらに、今回の試料では、一個体の中腸腺にマウス毒力で10,000MUを超える量を蓄積した試料が認められた。麻痺性貝毒成分の一つであるサキシトキシンは1~2 mgが致死量とされており、10,000MUはこれに匹敵する量である。ナミガイの中腸腺を喫食することもあると聞くが、高いリスクを伴う行為であり特に注意が必要である。
成果の活用面・留意点 今回の分析結果については生産者に説明し、モニタリングの重要性と毒化した本貝の危険性について了解が得られた。これにより、該当生産海域では次の漁期から毒化モニタリングを開始することとなり、関係機関の指導と生産者の自主規制により、安全性を確認したナミガイの流通が図られることとなった。
研究内容 http://fra-seika.fra.affrc.go.jp/~dbmngr/cgi-bin/search/search_detail.cgi?RESULT_ID=8195&YEAR=2018
カテゴリ モニタリング

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