イノシシによる水稲被害は防護柵の不備が原因で同じ圃場が繰り返し被害を受ける

タイトル イノシシによる水稲被害は防護柵の不備が原因で同じ圃場が繰り返し被害を受ける
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター
研究期間 2016~2018
研究担当者 石川圭介
堂山宗一郎
上田弘則
江口祐輔
発行年度 2018
要約 農業共済補償金の支払い対象となっているイノシシによる水稲の被害には、同じ圃場で複数年繰り返し被害を受ける傾向があり、被害圃場には柵が設置されていない、柵の一部が開いている、不適切な柵の設置をしているなど、全ての圃場に不備がある。
キーワード 鳥獣害、イノシシ、害獣侵入防止柵、農業共済
背景・ねらい 鳥獣害被害対策では被害防除(柵の設置)、環境管理(誘引物の除去や追い払い)、個体数管理(捕獲)の3つをバランス良く取り組む「総合対策」が重要と言われている。中でも被害防除は加害獣の圃場侵入を物理的に防ぐことができるため最も直接的な対策方法であるが、被害は依然無くならず、柵を設置しても被害が防げないケースが散見される。本調査では、実際に被害を受けて農業共済補償金の支払い対象となった圃場がどのような対策を行っていたか確認することで、被害が発生する圃場の特徴と問題点を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 鳥獣による農作物被害に悩む中山間営農地域であるM町34集落の調査結果である。調査地の総農家数は2015年農林業センサス調べで397戸。全圃場(4,991筆)を目視により確認し、土地利用、作付け品目、柵の設置状況、不適切な柵の施工の有無などを記録。最も多い品目は水稲で、圃場(水田)数は1,746筆、主な加害獣はイノシシである(図1)。
  2. イノシシによる水稲被害への農業共済被害補償金支払い状況(5年間)は、年平均43.8件・253.1万円。被害件数219件のうち70件は同じ圃場が複数年被害を受けており、同じ圃場が繰り返し被害を受ける傾向がある(表1、p < .01)。調査地34集落中13集落では過去5年間1件も補償金の支払いが無く、これらの集落では被害対策は概ね成功し、問題が解決している。
  3. 踏査年(2016年度)の被害圃場30筆のうち、圃場の状況が確認できた19筆の防衛状況は42%の圃場で柵を設置していない。柵を設置していた圃場も、半数以上が柵の一部を常時開放しており(37%)、イノシシが回り込むことで侵入可能な状況である(図2)。開放部分が無く、圃場全周を囲っていた圃場(21%)も、通電せずに用いることを前提としたダミーの電気柵(2筆、以下重複あり)、アスファルト際への電気柵の設置(2筆)、地際が未固定のトタン柵など(1筆)、全ての柵に不備がある。
  4. 踏査前年までに被害を受けた圃場117筆の踏査時の圃場利用状況は、46%の圃場でそのまま水稲の作付けを続けているが、44%は休耕または耕作放棄されている(図3)。イノシシによる食害は、耕作放棄を促進する要因の一つとなっている。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:国・県・市町村の鳥獣害担当者、農業共済組合、中山間地域の営農者
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:イノシシによる水稲の農業被害地域
  3. その他:本研究の結果から、ある程度鳥獣害対策が浸透している地域では、被害は地域の広い範囲で発生しているのではなく、正しい柵が設置できていない特定の営農者が繰り返し被害を出すために形成されている可能性がある。この場合、広域の被害軽減に影響を与える捕獲等の対策より、被害圃場を特定して正しい対策(柵の設置・管理法)をピンポイントに指導することが被害金額の低下に有用である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2018/18_075.html
カテゴリ 病害虫 水田 水稲 中山間地域 鳥獣害 防護柵 防除

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