感染単位密度を指標とした土壌中のアーバスキュラー菌根菌感染ポテンシャルの定量法

タイトル 感染単位密度を指標とした土壌中のアーバスキュラー菌根菌感染ポテンシャルの定量法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター
研究期間 2016~2018
研究担当者 大友量
小八重善裕
森本晶
長岡一成
岡紀邦
発行年度 2018
要約 対象土壌で短期間栽培した検定植物の根に形成されるアーバスキュラー菌根菌の感染単位密度により、土壌中のアーバスキュラー菌根菌の感染ポテンシャルを定量的に評価できる。
キーワード アーバスキュラー菌根菌、感染単位、感染ポテンシャル、定量法、前作効果
背景・ねらい アーバスキュラー菌根菌(AM菌)の共生は宿主植物の養分吸収を促進する。AM菌の宿主作物の栽培跡地では土壌中のAM菌密度が増加し、次作宿主作物のAM菌感染や生育が促進される(前作効果)。前作効果を有効活用すれば、ダイズへのリン酸施肥を3割削減できることを生産者圃場で実証し(2013年度普及成果情報)、北海道施肥ガイド2015(北海道農政部、2015)にもその成果が反映されている。しかし、中には宿主跡地であっても次作ダイズのAM菌感染率が高くない例があり、より的確に減肥の可否や減肥可能量を判断するためには、作土中のAM菌の感染ポテンシャル(感染能を有するAM菌密度)を定量してダイズへのAM菌感染程度を作付け前に推定する必要がある。土壌中のAM菌胞子の定量法はあるものの、操作が煩雑であり熟練を要する。また、胞子の生死の識別が困難であり、必ずしも土壌中のAM菌感染ポテンシャルを評価できない。一方で、対象とする土壌で宿主植物を短期間栽培した場合のAM菌の感染単位(Infection Unit: IU、単一の侵入点に由来する感染領域)密度は当該土壌中のAM菌感染ポテンシャルを反映すると考えられる。そこで、IU密度を指標として土壌中のAM菌感染ポテンシャルを定量評価する手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 本手法では、短期間(12~15日間)栽培した検定植物(ミヤコグサ、系統 Miyakojima MG20)の根に感染したAM菌のIUをジアミノベンジジン(DAB)染色で可視化して実体顕微鏡下でカウントし、格子交点法で算出した根長で除してIU密度を算出することにより、AM菌感染ポテンシャルを定量する(図1)。
  2. 土壌中のAM菌密度を人為的に変えたポット栽培で前項の手法によりIU密度を測定すると、IU密度は接種菌の量に正比例する(図2)。このことは本手法が土壌中のAM菌感染ポテンシャルの定量法として有効であることを示す。
  3. 一枚の圃場を分割して一部にAM菌宿主を栽培した翌年に土壌中のAM菌感染ポテンシャルを定量すると、IU密度は宿主跡で高く、裸地跡で低い(図3)。このことは本手法が前作効果によって土着AM菌が増殖しているかどうかを評価する手法として有効であることを示す。
成果の活用面・留意点
  1. 本手法は、前作効果の判定だけでなく、AM菌感染ポテンシャルに影響を及ぼす要因の解明、AM菌感染ポテンシャルの経年変化の追跡、AM菌分離株・AM菌資材の保存・維持方法の開発等、幅広い活用場面が想定される。
  2. 本手法で得られる定量値はばらつきが大きいので、検定植物の栽培は最低でも3連で実施する。また、排水性の悪い土壌等、検定植物の生育が不良な場合は、土壌と滅菌砂を混合することにより生育が安定する場合がある。ただし、異なる土壌間の比較等を行う場合は、土壌と砂の混合比等の栽培条件を統一する必要がある。
  3. 土着AM菌感染ポテンシャルの定量において採取土壌を直ちに供試できない場合は、室温保存や風乾保存よりも冷蔵保存が望ましい。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/harc/2018/harc18_s02.html
カテゴリ 栽培技術 栽培条件 施肥 大豆 排水性

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