タイトル | 温暖地向け豆乳用だいず新品種「すみさやか」 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター |
研究期間 | 2013~2019 |
研究担当者 |
髙田吉丈 小松邦彦 佐山貴司 山下謙一郎 猿田正恭 |
発行年度 | 2020 |
要約 | だいず「すみさやか」は子実中の青臭みの原因となる酵素リポキシゲナーゼおよびえぐ味の原因とされるグループAアセチルサポニンを欠失しており、豆乳加工に好適である。近畿中国四国地域における成熟期は晩生で、特性は「フクユタカ」に類似する。 |
キーワード | だいず、豆乳、リポキシゲナーゼ、サポニン、風味 |
背景・ねらい | 食用大豆の需要量は100万トン程度で推移し、このうち豆乳用の需要量は約6%であるが、近年の消費者の健康志向の高まりや技術改良による品質向上を受け、2018年の豆乳等生産量は1989年の約13倍となる36万キロリットルに増え、今後も増加傾向が続くと見込まれている。農研機構が育成した豆乳用品種のうち、寒冷地向けの「きぬさやか」は子実中の青臭みの原因となる酵素リポキシゲナーゼおよびえぐ味の原因とされるグループAアセチルサポニンの両方を欠失し、豆乳加工適性に優れ、実需者から一定の需要がある。増産および安定供給が要望されているが、「きぬさやか」の栽培特性から寒冷地以外の産地を確保することが困難であるため、他地域へ産地拡大を可能とする新品種の開発が求められている。 そこで、本研究では温暖地における栽培に適し、「きぬさやか」と同等の子実成分特性および豆乳加工適性を有する品種を育成する。 |
成果の内容・特徴 | 1.豆腐用主要品種「フクユタカ」を母、「フクユタカ」にグループAアセチルサポニン欠失を導入した戻し交雑系統とリポキシゲナーゼアイソザイム全欠の「エルスター」を交配し得られたF1を父とする人工交配から育成された品種である。 2.近畿中国四国地域における成熟期は"晩生"で、「フクユタカ」と同等である。子実重は6月播、7月播ともに「フクユタカ」と同程度で、「サチユタカ」より多収である。百粒重は「フクユタカ」「サチユタカ」より軽い。子実の臍の色は「サチユタカ」と同じ"黄"で、「フクユタカ」の"淡褐"と異なる。裂皮等の障害粒の程度は「フクユタカ」とほぼ同じである(表1)。 3.子実成分は、粗タンパク含有率が6月播で「フクユタカ」よりやや低いが、7月播では同程度であり、「サチユタカ」より2~3%低い。大豆の青臭みの原因となるリポキシゲナーゼアイソザイム3種類(L-1、L-2、L-3)の全欠失に加えて、えぐ味の原因とされるグループAアセチルサポニン(Ab型)を蓄積せず、非アセチルサポニン(A0型)を蓄積する(表1)。 4.製造した豆乳のBrix値や大豆固形分は標準品種「きぬさやか」よりやや高く、官能評価では全ての項目で「きぬさやか」と同等以上で、豆乳加工に好適である(表2)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.栽培適地は近畿中国四国地域および「フクユタカ」栽培地域である。 2.2020年から滋賀県で契約栽培が開始され、豆乳原料に利用される(普及見込面積:数百ha)。 3.リポキシゲナーゼ欠失等の成分特性の劣化を防止するため、栽培・収穫・調製時に異品種が混入しないように純度管理を徹底する。 4.裂莢しやすいのでコンバイン収穫が可能な水準に茎水分が低下したら早めに刈り取る。 5.ダイズシストセンチュウ抵抗性を持たないため、同虫害発生圃場での作付や連作は避ける。 6.本品種を利用した大豆加工食品に関する特許(特開2003-274885、存続期間満了日2022年3月27日)を取得している。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2020/warc20_s11.html |
カテゴリ | 加工 加工適性 新品種 大豆 抵抗性 品種 |