極短穂茎葉型イネWCSの飼料特性を活かして黒毛和種胚回収での正常胚率を向上させる

タイトル 極短穂茎葉型イネWCSの飼料特性を活かして黒毛和種胚回収での正常胚率を向上させる
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター
研究期間 2017~2019
研究担当者 後藤裕司
森脇匡史
渡部嘉丈
川上千尋
大島一修
発行年度 2020
要約 非繊維性炭水化物(NFC)が高く、粗蛋白質(CP)が低い極短穂茎葉型イネWCSの飼料特性を利用して、給与飼料中のNFCとDIP(分解性蛋白質)の比率(NFC/DIP値)を5.8に設計した飼養管理により、残存卵胞数と変性胚数が減少し、正常胚率が高くなる。
キーワード 極短穂茎葉型イネWCS、NFC、DIP、胚回収成績
背景・ねらい 飼料自給率の向上のために、休耕水田を有効活用した飼料生産による取り組みが行われており、飼料用イネのホールクロップサイレージの作付面積が全国に拡大してきている。極短穂茎葉型イネWCS(イネWCS)は、非繊維性炭水化物(NFC)の割合が高く、また、抗酸化作用が期待されるβ-カロテンやビタミンEを多く含むなどの優れた特徴を有している。
黒毛和種の受精卵移植に用いる胚生産においては、供胚牛に対して分解性蛋白(DIP)含量が低く、NFC含量を高くした飼料設計をすることで過剰排卵処理後の胚回収成績が改善されることが報告されている。また、供胚牛における血液中のβ-カロテン、ビタミンEが高値である場合、胚回収時の胚品質が改善される報告がある。これらのことから、NFC、β-カロテンおよびビタミンEを多く含むイネWCSを主体に飼料給与することで胚回収成績を改善させる効果が期待できる。
そこで、受精卵移植のための黒毛和種供胚牛に対し、イネWCSを主体に飼料給与することが胚回収時の血液成分や胚回収成績に及ぼす影響を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.日本飼料標準で定められている乾物量の充足率が100%程度となるように、イネWCS主体(イネWCS区)または乾草主体(乾草区)とした飼料設計を行い、それぞれの飼料を胚回収時まで個体ごとに給与すると、NFCとDIPの比率を示すNFC/DIP値はイネWCS区(5.8)が乾草区(2.1)よりも大きくなる(表1)。
2.胚回収時の胚品質が改善されることが知られているβ-カロテンやビタミンEの血中濃度は、イネWCS区の方が有意に高くなる(p<0.05、表2)。
3.過剰排卵処理前に発情誘起し、発情発現日を0日として一連の過剰排卵処理を実施した後、胚回収のための人工授精(AI)から7日目の朝に子宮灌流法により胚回収を行い(図1)、イネWCS区と乾草区の胚回収成績を比較すると、回収時の正常胚率(回収胚数に対する正常胚数の割合)は、イネWCS区で、乾草区よりも有意に高くなる(p<0.05、表3)。また、残存卵胞数、変性胚数は、イネWCS区が乾草区よりも有意に少なくなる(p<0.05)。
4.給与飼料全体のNFC/DIP値を調整することが第一義だが、イネWCSを主体に給与すると血中のβ-カロテン、ビタミンE濃度も増加するので、胚回収成績に対して相乗効果があると考えられる。
成果の活用面・留意点 1.イネWCSは、「たちすずか」WCSを用いている。
2.過剰排卵処理後の胚回収時の正常胚率を向上できる飼料設計として利用できる。
3.飼料設計の際には、給与する飼料の成分分析を行い、給与飼料全体のNFC/DIP値を調整する必要がある。
図表1 244566-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2020/wcs.html
カテゴリ 飼育技術 受精卵移植 飼料設計 飼料用作物 水田

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