タイトル | 消化管内容物分子解析によるヒメハナカメムシ類のインセクタリープランツから作物への移動推定法 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 西日本農業研究センター |
研究期間 | 2011~2020 |
研究担当者 |
林正幸 安部順一朗 大鷲友多 三浦一芸 |
発行年度 | 2020 |
要約 | インセクタリープランツに特異的なDNAマーカーを用い、土着天敵であるヒメハナカメムシ類の消化管内容物を分子解析することで、ヒメハナカメムシ類のインセクタリープランツから作物への移動を推定できる。 |
キーワード | 土着天敵、天敵温存植物、PCR、スカエボラ、ナス |
背景・ねらい | インセクタリープランツ(天敵温存植物)は、天敵昆虫の生存と定着性を向上させるため、さまざまな栽培圃場で利用されている。インセクタリープランツに誘引・維持された天敵が効果的に害虫密度を抑制するためには、これらの天敵がインセクタリープランツから対象作物へ移動する必要がある。しかし、これまでにインセクタリープランツと作物間の天敵の移動分散に関する直接的な知見は無い。そこで、雑食性天敵であるヒメハナカメムシ類とインセクタリープランツ(スカエボラ)をモデルとして、寄主植物特異的DNAマーカーを用いた天敵の消化管内容物解析によるインセクタリープランツから作物(ナス)への移動推定方法を開発する(図1)。 |
成果の内容・特徴 | 1.特異的プライマーを用いたPCR法により、ナスおよびスカエボラのDNAをヒメハナカメムシ野外採集個体の消化管内容物から検出できる(表1)。 2.ナスのみを植えたナス単植区で採集したヒメハナカメムシからはナスのDNAが検出されるが、スカエボラのDNAは検出されない(表2)。一方、スカエ3.ボラのみを植えたスカエボラ単植区ではスカエボラのDNAが検出されるが、ナスのDNAは検出されない。 4.ナスとスカエボラを植えた混植区では、ナス葉上で採集したヒメハナカメムシ類から、ナスだけでなくスカエボラのDNAが検出される(表2)。これらの結果から、ヒメハナカメムシ類はスカエボラからナスへ移動することが示唆される。 |
成果の活用面・留意点 | 1.インセクタリープランツに特異的なDNAマーカーを用いた消化管内容物解析は、天敵昆虫のインセクタリープランツから作物への移動推定に有用である。 2.ヒメハナカメムシ類だけでなく他の雑食性天敵の移動推定にも適用可能な手法である。インセクタリープランツ混植圃場の作物上の天敵から、インセクタリープランツ特異的DNAが検出されれば、インセクタリープランツから作物への移動が推定される。 3.植物質の餌を摂食するヒメハナカメムシ類ではインセクタリープランツに特異的なDNAマーカーを用いた移動推定が可能であるが、植物を摂食しない天敵では本手法は適用できない。 4.コヒメハナカメムシは混植区においてスカエボラDNAが検出されなかったが、本種がスカエボラからナスへ移動しない可能性、サンプルサイズが小さく移動個体を検出できなかった可能性が考えられる。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/warc/2020/warc20_s07.html |
カテゴリ | 害虫 カメムシ DNAマーカー 土着天敵 なす |