気候変動による温州ミカンの着花性および「不知火」のこはん症発生の変化と対策技術

タイトル 気候変動による温州ミカンの着花性および「不知火」のこはん症発生の変化と対策技術
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究期間 2015~2020
研究担当者 岩崎光徳
北園邦弥
相川博志
中村健吾
発行年度 2020
要約 気候変動による秋冬季の高温は温州ミカンの直花割合を高めることで隔年結果の要因となり、夏秋季の土壌乾燥は「不知火」のこはん症を誘発する。対策として、温暖化により増加する直花は既存の花芽調節技術が、こはん症には夏秋季の灌水が有効である。
キーワード 温暖化、花、隔年結果、デコポン、生理障害
背景・ねらい 近年、カンキツでは気候変動により浮皮や日焼けが多発し大きな問題となっているが、花芽着生性の変化によって誘発される隔年結果や、こはん症のような果皮障害の多発も顕在化しつつある。このうち、着花性については、これまで気温と花芽の形成は密接にかかわることが明らかになっているものの、実際の温暖化を想定した研究はなく、その影響は未解明だった。また「不知火」などで発生するこはん症は、樹上または貯蔵中に、果皮の一部が不規則に陥没を起こし褐変化する生理障害で、商品価値が低下するが、発生原因が特定されていなかった。そこで、温州ミカンと「不知火」を用いて、気候変動による着花性とこはん症発生の影響と対策技術について研究を行う。
成果の内容・特徴 1.温暖化を想定して気温の高い環境下で生育させた温州ミカン樹は、直花の割合が増加し(図1)、花芽全体の量も増える。そのため、平年の気温条件下で安定生産可能な品種でも、高温下では花と新梢のバランスが崩れ、隔年結果に繋がる傾向にある。また、高温により花芽の生育が前進化し、満開日は2°C上昇で約2週間、4°C上昇で約4週間早くなる。
2.隔年結果の是正技術は、予備枝の作成(坊主枝の作成、夏秋梢剪除、摘葉処理)、冬季ジベレリン散布および摘蕾がある。いずれも花を減少させ新梢(あるいは有葉花)の発生を促進させることで、花と新梢のバランスを整える技術である。平年より2°C上昇の温暖化条件下において、これらの技術はいずれも有効で、直花の減少とともに新梢(あるいは有葉花)の発生を促進させる(図2)。その中で摘蕾は、もっとも効果的だが、処理期間が短く労力が大きいことから、他の技術と組み合わせて対応することが望ましい。
3.「不知火」のこはん症について、温暖化を想定した気温の高い環境下で生育させた樹の果実は、平年の気温条件下のそれと比べて発生の増加は認められない(データ省略)。一方、夏秋季に強制的に土壌乾燥処理を行うと、こはん症は増加する(図3)。気候変動は気温上昇だけでなく雨の降り方も極端になり、無降水日数は増加すると予想されていることから、夏秋季の少雨年は、こはん症が発生しやすくなると考えられる。
4.「不知火」こはん症の対策として、土壌乾燥を防ぐために夏秋季のあいだ土壌水分計pFメータ(測定部の深さ20cm)で2.4程度を目安に灌水することで、慣行(灌水なし)より発生率を大幅に軽減できる(図4)。この場合の収益の効果は、10アール当たりの粗収益で7.7万円増である(H29「熊本県果樹振興実績」の平均出荷量、デコポン合格果およびジュース原料果の価格をもとに試算)。
成果の活用面・留意点 1.普及対象:カンキツの生産者、指導員、普及員
2.普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:温州ミカンは温暖化の進行により技術の利用は変動する。「不知火」は灌水設備を有する園地(例:熊本県300ha程度)。
3.その他
・花芽の調節技術は、いずれも既存技術として利用されている方法である。
・こはん症の灌水の目安として利用するpFメータは市販されている。
・本情報は公表しているマニュアルを用いて普及活動を進める。
図表1 244612-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2020/20_049.html
カテゴリ 温州みかん 乾燥 出荷調整 生理障害 品種 その他のかんきつ

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