カンキツの果実、加工品におけるSNPジェノタイピング解析による品種識別技術

タイトル カンキツの果実、加工品におけるSNPジェノタイピング解析による品種識別技術
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究期間 2017~2020
研究担当者 遠藤朋子
藤井浩
吉岡照高
大村三男
島田武彦
発行年度 2020
要約 8種類のSNPマーカーをTaqMan-MGBプローブを用いてジェノタイピングすることにより、主要なカンキツ48品種を相互に識別でき、高品質なDNAを抽出することが難しい果実や加工品の品種識別に利用できる
キーワード DNA、遺伝子型、権利侵害、偽装表示
背景・ねらい 近年、農産物の輸出拡大に向けた取り組みを進める中で、わが国で育成された優良品種が国外へ不当に流出して生産される行為が顕在化している。また、加工食品などにおいて原材料の品種表示が正しく行われない偽装表示も問題となっている。国外への優良品種の流出や食品偽装表示は、育成者権の保護、消費者に対する食の安全・安心確保の観点からも大きな問題であり、わが国の農業生産や国民生活への影響が懸念される。カンキツ類においては、既存のDNAマーカー技術により、葉を供試材料として我が国で育成された主要品種の識別が可能である。しかし、国外から持ち込まれる果実や加工品を分析する場合には、断片化や夾雑物が少なく、既存の技術に適用可能なDNAの抽出が難しいことから、既存の技術の適用に課題が生じている。そこで、このような材料にも利用できるTaqMan-MGBプローブを用いたSNP ジェノタイピング解析による品種識別技術を開発する。
成果の内容・特徴 1.果樹茶業研究部門で育成された21品種を含む合計48のカンキツ品種の識別に利用可能である。(表1)。
2.カンキツの品種識別に利用可能なSNPマーカーは、特定の染色体に集中しないように考慮された3.SI312、SI1001、SI322、SI149、SI306、SI201、SI210、SI381の8種類で構成される。SNPマーカーの増幅断片長、ゲノム解読から予測した仮想染色体(スキャフォールド)上の位置などの情報を表2に示す。
4.果実や加工品では、一般に400bp以上のPCR増幅断片を得ることが困難なので、8種類のSNPマーカーではPCR増幅断片が100bp以下となるように設計されている。
5.本技術は、生鮮果実のほか、ストレートジュース、缶詰、ドライフルーツなどの加工品の品種識別に利用できる(図1)。
成果の活用面・留意点 1.普及対象:農業・食品関連試験研究機関、税関等の検査機関、加工品業者。
2.普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:定量PCR機器を持つ検査機関、受託依頼分析可能な民間会社など
3.その他:
・加工過程でDNAが100bp以下に高度に断片化された場合やPCRの増幅を阻害する夾雑物を含む場合など、適切なDNAの質と量が得られない場合は、本成果を利用しても品種識別ができない。SNPジェノタイピング実験の前にDNAの品質を確認することが望ましい。
・同じ種類の加工品でも、加工工程の違いにより、分析に必要な適切なDNAが抽出できないことがある。
・本技術の利用には定量PCR機器が必要である。
・加工品において品種が混合されていた場合は、正しい分析結果が取得できない可能性があることから、分析サンプルに利用しない。
・ウンシュウミカン、オレンジ、レモンなどの主要なカンキツについては、枝変わり品種や珠心胚由来の品種間で同一の遺伝子型が検出されることを確認している。
・表2に掲載しているSNPの周辺配列情報を利用することにより、他のSNP検出技術で多型を検出することができる。
具体的な分析手順や品種の遺伝子型などの詳しい情報は、標準作業手順書(SOP)に記載している。
図表1 244614-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2020/20_028.html
カテゴリ 温州みかん 加工 DNAマーカー 品種 輸出 レモン その他のかんきつ

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