キサントフィルエステル化酵素遺伝子の導入は花弁の濃黄色化を促進する

タイトル キサントフィルエステル化酵素遺伝子の導入は花弁の濃黄色化を促進する
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門
研究期間 2016~2019
研究担当者 岸本早苗
大宮あけみ
山溝千尋
発行年度 2020
要約 淡黄色花色のペチュニアにキサントフィルエステル化酵素遺伝子を導入すると、エステル体キサントフィルの蓄積量が増加するとともにカロテノイド生合成系酵素遺伝子の発現が上昇し、総カロテノイド量が増加した濃黄色花色の個体が得られる。
キーワード 花色、カロテノイド、キサントフィル、エステル化、ペチュニア
背景・ねらい カロテノイドはアントシアニンとともに花弁の主要な色素の1つである。近年、高温時の花き生産において、アントシアニンにより着色する赤色系花色の退色が問題となっている。一方、カロテノイドによる着色は高温期においても比較的安定であり、通常は黄色のカロテノイドを花弁に大量に蓄積することによって赤橙色を作り出しているマリーゴールドは、夏場でも鮮やかな花色を示す。マリーゴールド花弁に含まれる主要なカロテノイド成分は、黄色いキサントフィルと呼ばれるグループのカロテノイドが脂肪酸とエステル結合したエステル体キサントフィルである。キサントフィルはエステル体となることによって、色調は変化しないが、花弁細胞内のカロテノイド蓄積器官である色素体への大量蓄積が可能になると考えられている。そこで本研究では、キサントフィルのエステル化に注目し、ペチュニアを用いて花弁のカロテノイド蓄積量を効率的に増加させる鍵遺伝子を明らかにし、高温時にも安定なカロテノイドのみで構成された赤色系花色を作り出すことを目指す。
成果の内容・特徴 1.ペチュニア淡黄花品種の花弁に含まれるカロテノイドの主要成分はゼアキサンチンやルテインといった黄色いキサントフィルである。これらペチュニア花弁に含まれるキサントフィルはエステル体の割合が低いことから、ペチュニアのキサントフィルエステル化酵素(XES)はキサントフィル類をエステル体に変換する効率が低く、このことがペチュニア花弁のカロテノイド蓄積量が少ない原因の1つとなっていると推測される。
2.大量のエステル体キサントフィルを花弁に含む3種の植物(マリーゴールド:エステル体ルテイン、黄花イポメア属野生種:エステル体β-クリプトキサンチン、トマト:エステル体ネオキサンチン・ビオラキサンチン)からXES遺伝子を単離し、過剰発現コンストラクトを構築する。これらをペチュニア淡黄花品種の「カリフォルニアガール」に導入すると、いずれのコンストラクトを用いても野生型よりも赤みの強い濃黄色花色を示す形質転換体が得られる。いずれのXES遺伝子導入形質転換体も野生型に比べて花弁のエステル体キサントフィルが増加し、マリーゴールド由来のXES遺伝子を導入した系統では総カロテノイド量が約3倍増加する(図1、図2)。
3.XES遺伝子導入形質転換体の花弁では、野生型と比べて一部の内在カロテノイド生合成系酵素遺伝子が高い発現を示す(図3)。エステル化活性の上昇に加え、生合成活性が上昇することがXES遺伝子導入形質転換体の花弁の総カロテノイド量増加の原因であると推測される。
4.花弁に蓄積するキサントフィルの組成はXES酵素の基質特異性に影響を受ける。野生型とXES遺伝子導入形質転換体を比較すると、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、ルテインはマリーゴールド由来のXES遺伝子導入形質転換体、ゼアキサンチンはトマト由来のXES遺伝子導入形質転換体、β-クリプトキサンチンは黄花イポメア属野生種由来のXES遺伝子導入形質転換体において最も増加する(図4)。
成果の活用面・留意点 1.本研究で得られたXES遺伝子に関する知見を利用することによって、よりカロテノイド蓄積量を増加させ、夏季の高温時にも安定なカロテノイドのみで構成された赤色系花色を作出できる可能性がある。
図表1 244621-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nivfs/2020/nivfs20_s08.html
カテゴリ トマト 品種 ペチュニア マリーゴールド

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