ガラス化冷却前のウシ胚盤胞の平衡処理における凍結保護物質の毒性は低減できる

タイトル ガラス化冷却前のウシ胚盤胞の平衡処理における凍結保護物質の毒性は低減できる
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門
研究期間 2019~2020
研究担当者 ソムファイ タマス
平尾雄二
Thatawat YODRUG
Rangsun PARNPAI
発行年度 2020
要約 ウシ胚盤胞のガラス化冷却保存では前処理として凍結保護物質による平衡が行われる。高濃度の凍結保護物質は毒性を有することから、その軽減を目的として濃度を15%から4%へと下げると、凍結保護効果が弱まる傾向が認められるものの拡張胚盤胞への発生率は同等である。
キーワード ウシ、胚盤胞、ガラス化保存、凍結保護物質、ストレス応答
背景・ねらい ウシ胚の移植を効率的に行うには胚盤胞の凍結保存が不可欠であり、その手法の一つであるガラス化冷却保存の実用化が図られている。ガラス化処理の前段階として凍結保護物質による平衡処理が行われるが、凍結保護物質は細胞毒性を持つことが知られており、胚発生に影響を与えない範囲でその濃度を低減させることが望ましい。そこで、本研究では、平衡液の凍結保護物質濃度を一般的な15%から4%へと低下させてウシ胚盤胞のガラス化冷却を行う。また、胚盤胞の生存・発生に重要な遺伝子のうち八つを選び、加温後における遺伝子発現の正常性を明らかにする。
成果の内容・特徴 1.体外受精由来ウシ胚盤胞を凍結保護物質である7.5% エチレングリコール + 7.5% ジメチルスルホキシド(DMSO)(計15%)あるいは2% エチレングリコール + 2% DMSO(計4%)の平衡液で処理してガラス化冷却保存すると、加温後の拡張胚盤胞率において濃度による差はない(図1)。しかし、ガラス化処理を行わない対照区を含めて比べると4%区において低い(図1)。
2.胚盤胞を構成する総細胞数(図2)および細胞膜に損傷をもつ細胞の率(図3)については、凍結保護物質の濃度による差はない。対照区と比較すると、4%区では総細胞数は少なく(図2)、損傷した細胞膜をもつ細胞の率も4%区が高い(図3)。
3.インプリンティング、エピゲノム制御、アポトーシス誘導、未分化状態維持、妊娠認識に関連する遺伝子発現レベルは対照区を含む全区間で差がない(図4)。ストレス応答分子であるHSP70(熱ショックタンパク質)の発現レベルにおいては、凍結保護物質の濃度の違いによる差はないものの、対照区と比べると15%区が高い(図4)。
4.以上の三つの検討結果から、平衡液の凍結保護物質の濃度をほぼ1/4に低減してガラス化保存した場合でも胚発生率において同等の成績が得られるが、胚の品質は低下する傾向がある。
成果の活用面・留意点 1.細胞毒性が指摘されている代表的な凍結保護物質はDMSOであり、その低減は技術の普及に向けて有利な点となる。
2.平衡後のガラス化処理は、16.5% エチレングリコール + 16.5% DMSO + 0.5M スクロースのガラス化液を用いたCryotop?法によるものである.
図表1 244642-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nilgs/2020/nilgs20_s08.html
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