発育鶏卵を用いた豚デルタコロナウイルスの培養・分離技術の開発

タイトル 発育鶏卵を用いた豚デルタコロナウイルスの培養・分離技術の開発
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
研究期間 2016~2020
研究担当者 井関博
渡邉聡子
真瀬昌司
発行年度 2020
要約 豚デルタコロナウイルスを発育鶏卵に接種することにより、当該ウイルスを培養・分離することを可能とする技術である。本技術は、罹患豚から得られた糞材料から直接当該ウイルスを分離することを可能とし、新興感染症である豚デルタコロナウイルス感染症の診断精度向上に大きく貢献する。
キーワード 診断、人獣共通感染症、発育鶏卵、豚デルタコロナウイルス、ワクチン
背景・ねらい 豚デルタコロナウイルス(PDCoV)は、2014年から始まった北米における豚流行性下痢ウイルス(PEDV)の大流行の最中、PEDVに因らない下痢症個体から新たに分離されたことから注目を集めた。その後、我が国を含めた多くの国でPDCoVによる豚の下痢症流行の報告が相次いでいることに加え、当該ウイルスがヒトを含めた様々な動物の細胞に感染性を有する研究が複数報告されたことから、人獣共通感染症の病原体になり得るのか注視されている。しかし、PEDVを始めとした下痢症を引き起こすウイルスは、一般的に培養細胞を利用したウイルスの分離・培養手法の開発が難しく、PDCoVの感染を疑う野外症例の診断を難しくしている。複数種の培養細胞を用いたPDCoVの分離・培養手法が報告されているが、既報の方法には手間や時間、専門的な技術を要する。
そこで、本研究ではPDCoVが分類されているデルタコロナウイルスのグループが、様々なコロナウイルスの中でも鳥類から多く分離されているウイルスであることに着目し、発育鶏卵を利用した豚デルタコロナウイルスの培養手法を開発することを目的とする。PDCoVを発育鶏卵で培養・分離可能な技術は、PDCoVを少ない労力で大量かつ短時間で培養できるようになり、家畜分野における新興感染症である豚デルタコロナウイルス感染症の診断に大きく貢献する普及性の高い新技術となる。
成果の内容・特徴 1.PDCoVは、孵卵3日から7日目の発育鶏卵の尿膜腔内にウイルスを含む液を接種することにより培養することができる(図1)。孵卵2日目までの発育鶏卵を利用する場合でもウイルスの培養は可能であるが、接種時に有精卵であることの確認ができないため、実用的ではない。一方、孵卵8日目以降は著しくウイルスの感染性が低下するため、PDCoVの培養には適さない。
2.PDCoVは、発育鶏卵を用いた連続継代により、ウイルスの複製効率を低下させることなく、接種から72時間で安定した回収量を得ることができる。本技術は、将来的にPDCoVを主成分とするワクチンが開発された場合、成分となるウイルスを容易に大量培養することを可能とする。
3.豚糞材料に混和した10倍階段希釈ウイルス液を用いたウイルス分離試験では、既報の培養細胞を用いた手法に比較し、発育鶏卵を用いる手法は、糞材料に含まれるウイルス量が低い場合でも高い分離効率を示す(表1)。
成果の活用面・留意点 1.発育鶏卵を用いたPDCoVの培養技術は、将来的なワクチン製造技術として有用である。
2.発育鶏卵を用いた糞材料からのPDCoV分離技術は、本ウイルスに因る感染症の診断法として有用である。
図表1 244675-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niah/2020/niah20_s07.html
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