共生細菌ボルバキアの感染拡大に伴う異種間浸透の実態

タイトル 共生細菌ボルバキアの感染拡大に伴う異種間浸透の実態
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2015~2020
研究担当者 陰山大輔
宮田真衣
野村昌史
発行年度 2020
要約 宿主昆虫の生殖を操作し、集団内に広まる能力を持つ共生細菌ボルバキアは、近縁宿主間で、交雑による異種間浸透を過去に複数回推し進めていたと考えられる。害虫防除や益虫強化にボルバキアを応用利用する際に、より高い効果を発揮する対象昆虫の選定が可能となる。
キーワード 遺伝子浸透、細胞内共生細菌、昆虫、ボルバキア、遺伝子多型解析
背景・ねらい 細胞内に共生する細菌ボルバキア(Wolbachia pipientis)は、宿主昆虫の生殖システムを様々な方法で操作することにより、宿主集団内で急速に広まる能力を持っている。ボルバキアが持つこのような能力を利用し、害虫を防除したり、有用昆虫の能力を高めたりする取り組みがなされているが、実際に応用利用された際にどのような副次的効果があるのかは、ほとんど解明されていない。また、昆虫の細胞質に存在するミトコンドリアはボルバキアと同様に母系遺伝することから、ボルバキアの動態を知るためのマーカーとして利用できる(図1)。そこで、本研究では野外に生息する近縁種2種(キタキチョウとミナミキチョウ)をモデルとして、ボルバキアの感染状態を調べるとともに、宿主の核DNAおよびミトコンドリアDNAの塩基多型を調べることにより、この2種が過去にボルバキアによってどのような影響を受けたのかを推定する。
成果の内容・特徴 1.核にコードされているTriosephosphate isomerase遺伝子(Tpi)の塩基配列は、キタキチョウとミナミキチョウで明確に分かれる(図2)。
2.ミトコンドリアのcytochrome oxidase subunit 1 (COI)およびcytochrome oxidase subunit 3 (COIII)領域の塩基配列は、大まかにはキタキチョウとミナミキチョウで分かれるわけではなく、それぞれの種内においてボルバキアの感染状態に応じて2つの単系統群に分かれる(図3)。
3.以上の結果から、近縁宿主2種間の進化の過程で少なくとも2回以上の交雑が独立に起きてボルバキアとそれが感染していた細胞質そのものが種を超えて伝達したことが分かる(図4)。
4.ボルバキアが起こす生殖操作の強さとその効果の大きさが明確に示されている。
成果の活用面・留意点 1.ボルバキア感染虫を野外に放飼した際に、当該宿主集団内に広まるだけでなく、比較的容易に近縁種に浸透しうるため、近縁種も含めた、より大きな効果が期待できるが、その影響力についても留意する必要がある。
2.近縁種を多く含む害虫種などの種判別に際し、ミトコンドリア領域の塩基配列情報のみに頼ることは、誤った結果を導きうることに留意する必要がある。
図表1 244738-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2020/nias20_s10.html
カテゴリ 害虫 防除

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