漏生イネ対策のためのHIS1破壊によるゲノム編集除草剤感受性系統の作出

タイトル 漏生イネ対策のためのHIS1破壊によるゲノム編集除草剤感受性系統の作出
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2015~2019
研究担当者 小松 晃
大武美樹
島谷善平
西田敬二
発行年度 2020
要約 塩基置換技術を用いたゲノム編集によって、元のイネが有する除草剤抵抗性遺伝子であるHIS1を働かないようにすることができる。これにより、漏生イネ対策に資する除草剤感受性の飼料用イネ系統を、HIS1上のピンポイント変異により効率的に作出できる。
キーワード ゲノム編集、シチジンデアミナーゼ、漏生イネ対策、ベンゾビシクロン、HIS1遺伝子
背景・ねらい 栽培されたイネの種子が水田に落ちると、冬を越し来春に自発的に発芽する。発芽したイネは「漏生イネ」と呼ばれている。飼料用イネ品種からの漏生イネの発生は、次の年に主食用稲品種を栽培した際に、飼料用イネの混入を引き起こす問題があり、収量性等において優れている飼料用専用品種の積極的な利用を妨げている。
水田での雑草防除用に開発されたトリケトン系除草剤の一つ「ベンゾビシクロン(BBC)」は、スルホニウルウレアを含む他の除草剤に抵抗性を示す水田雑草に対し有効性を示す。近年、多くの日本型イネ品種が、BBCに対し抵抗性を示し、その原因遺伝子HIS1が同定された。
本研究では、CRISPR/Cas9-シチジンデアミナーゼ融合体による塩基置換ゲノム編集技術を用い、「開始コドンの解消変異」または「終止コドンの創出変異」を通じてHIS1を破壊(ノックアウト)することが可能なことを実証し、BBCを含むトリケトン系除草剤感受性系統の作出を目指す。同技術を適用することにより、将来的には、漏生イネの発生による主食用品種と飼料用品種の混在の回避が可能となる。
成果の内容・特徴 1.HIS1遺伝子上の「開始コドン解消変異」用の1箇所と、「終止コドン創出変異」用の3箇所のgRNA (図1A)の全てによって、目的の塩基置換を有するノックアウト系統の作出が可能である(図1B)。
2.塩基置換による変異導入効率は、1つの開始コドン解消と3つの終止コドン創生用gRNAのそれぞれについて、3.6%、13.5%、13.8%、21.2%であり、gRNA設計箇所が限定的となる開始コドン変異以外は、高い頻度で目的の塩基置換が実現できる(表1)。
3.HIS1ノックアウト系統は、BBCに対し感受性が付与され(図2)、他のトリケトン系除草剤 であるスルコトリオン、メソトリオン、テンボトリオン、テフリルトリオンに対しても、野生型と比較して感受性を示す。
4.未熟胚由来のカルス培養系を用いるインド型品種「北陸193号」(飼料用イネ品種・トリケトン系除草剤に抵抗性)を原品種に用いても、置換変異ゲノム編集技術によるHIS1ノックアウト系統を11.1%の変異導入効率で獲得出来る(図3)。
成果の活用面・留意点 1.CRISPR/Cas9-シチジンデアミナーゼを用いた塩基置換変異イネ系統の作成は、今後、より高度な新型酵素を利用した品種開発等への活用に繋がる。
2.ゲノム編集技術を用いることにより、リンケージドラッグ(交配で特定の形質を導入しようとする際に、その形質にかかわる目的の遺伝子の近くにある遺伝子が一緒に導入され、望ましくない形質が残ってしまう現象)の回避や、そのための戻し交配を軽減することで、目的形質を持つイネ系統を効率的に作出することができる。
3.中課題20808での今年度成果情報である「新規脱粒性遺伝子」へのノックアウトにより難脱粒性「北陸193号」(原品種は脱粒性"やや易")も作出しており、2つの成果を合わせて活用することで、より確実な漏生イネ対策が可能である。
図表1 244744-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2020/nias20_s04.html
カテゴリ 雑草 除草剤 飼料用作物 水田 抵抗性 抵抗性遺伝子 品種 品種開発

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