新規カドミウム浄化専用イネ品種による水田のファイトレメディエーション

タイトル 新規カドミウム浄化専用イネ品種による水田のファイトレメディエーション
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター
研究期間 2009~2019
研究担当者 安部匡
伊藤正志
高橋竜一
本間利光
関谷尚紀
白尾謙典
倉俣正人
村上政治
石川覚
発行年度 2020
要約 新規カドミウム浄化専用品種「ファイレメCD2号」を用いたカドミウム汚染水田のファイトレメディエーション(植物浄化)技術は、従来品種を用いた同技術より効率的な植物浄化が可能である。
キーワード ファイトレメディエーション、カドミウム、カドミウム浄化専用品種、耐倒伏性、難脱粒性
背景・ねらい ファイトレメディエーションは、植物が持つ養分吸収能を利用して、カドミウム(Cd)等の有害物質を土壌から取り除く方法である。Cd汚染水田において、Cd高集積性を有するイネ品種を用いたファイトレメディエーションは有望な技術であるが、既存の品種は収穫前に倒れやすく(倒伏性)、籾が落ちやすい(脱粒性)特徴を持つため、栽培しやすい実用品種の開発が望まれている。本研究では、先行して育成された耐倒伏性と難脱粒性を有する実用的高Cd集積品種「ファイレメCD1号」よりもさらに高い耐倒伏性を獲得した新規のCd浄化専用品種を開発し、その品種を用いた実用性と効率性を併せ持つファイトレメディエーション技術を提案する。
成果の内容・特徴 1.この成果は、従来のCd高集積品種の不良形質を改良した新規Cd浄化専用品種を、Cd収奪を促進する早期落水栽培法(中干し以降天水栽培)で栽培することで、従来品種より効率的にCd汚染水田のファイトレメディエーションを行うことを可能にした技術である。
2.新規Cd浄化専用品種の育成には、Cd高集積遺伝子として知られる機能欠損型OsHMA3遺伝子を利用している(Ueno et al. 2010、Miyadate et al. 2011)。OsHMA3タンパク質は、根細胞の液胞内にCdを輸送するトランスポーターであり、機能を欠損すると根で吸収されたCdが、液胞に隔離されずに地上部に運搬され、籾藁のCd濃度が上昇する(図1)。この遺伝子を持つインディカ品種「ジャルジャン」に耐倒伏性と難脱粒性を持つ飼料イネ品種「たちすがた」を3回交配し、Cd高集積遺伝子を検出できるDNAマーカーを利用して選抜・育成したのが、Cd浄化専用品種「ファイレメCD2号」である(図2)。
3.「ファイレメCD2号」が耐倒伏性と難脱粒性を有することで、機械収穫時の作業性が向上する(表1)。
4.「ファイレメCD2号」の籾藁のCd収奪量と土壌Cd濃度の低減率は、先行研究でCd浄化に利用された「長香穀」より高く、効率的なファイトレメディエーションが期待できる(図3)。
5.これらの成果は、東北から九州までの複数の試験地において安定性が確認されている。
成果の活用面・留意点 1.「ファイレメCD2号」を用いたファイトレメディエーションは「植物による土壌のカドミウム浄化技術確立実証事業実施の手引(第2版)(2018、農林水産省・農研機構)」に紹介されており、詳細な情報は入手可能である。
2.「ファイレメCD2号」は、Cd収奪を促進する早期落水栽培(中干し以降天水栽培)により不稔を発生させる可能性がある。しかし、落水による不稔は籾藁のカドミウム収奪量に影響しないため、中干し以降は落水を徹底し、過乾燥と思われる場合のみ走水を行う。
3.採種を行う場合は、採種用圃場を設け、食用品種と同様の水管理を行う。肥培管理は「たちすがた」に準じて行う。
4.本品種を水田転換畑のファイトレメディエーションに活用することで、ダイズやムギなどの畑作物のCd低減にも役立つことが期待できる。
図表1 244778-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2020/niaes20_s02.html
カテゴリ 乾燥 水田 大豆 DNAマーカー 肥培管理 品種 水管理 輸送

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