高温・高CO2複合影響を考慮した新たな水稲収量および外観品質の気候変動影響評価

タイトル 高温・高CO2複合影響を考慮した新たな水稲収量および外観品質の気候変動影響評価
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 農業環境変動研究センター
研究期間 2010~2020
研究担当者 石郷岡康史
長谷川利拡
桑形恒男
西森基貴
若月ひとみ
発行年度 2020
要約 高温・高CO2濃度条件に対する水稲の応答特性に関する最新の知見を取り入れた、気候変動がわが国の水稲収量および外観品質へ及ぼす影響の高解像度再評価である。従来の予測結果より収量減と外観品質の低下が顕著な結果となり、今後の適応計画の更新における重要な基礎情報となる。
キーワード 高温・高CO2複合影響、水稲収量、白未熟粒、影響評価、適応計画
背景・ねらい 気候変動適応法の施行に伴い、国や自治体における気候変動適応計画策定の必要性から、信頼性の高い気候変動影響評価のニーズが高まっている。水稲はわが国の基幹作物であり、予測される気候変動が収量や外観品質へ及ぼす影響の評価が重点的かつ継続的に実施されてきた。一方で、将来に想定される栽培環境での環境制御実験により、従来の影響評価モデルでは考慮されていない水稲の栽培環境への生理応答に関する新たな知見が得られており、これらの知見を考慮に入れた最新の改良モデルによる再評価が求められている。そこで、国内の水田を対象として、FACE(Free-Air CO2 Enrichment)実験により得られた、CO2増収効果の温度依存性や、高CO2による外観品質低下の助長といった知見を従来のモデルに組み込んだ新たな手法により、日本全国1kmメッシュで気候変動下における水稲収量および品質の再評価を行う。
成果の内容・特徴 1.基準(380ppm)から200ppm高めたCO2濃度による水稲の増収効果は、出穂後30日間の平均気温が20°Cでは約+20%であるが、気温の上昇に伴い増収効果は減少し、30°Cではほぼ0%になるという結果が、FACE実験により得られている。この関係を従来の水稲生育・収量予測モデル(H/Hモデル)に組み込むことで、高温と高CO2の複合影響が考慮された収量推定が可能となる。また外観品質については、CO2濃度+200ppm条件において白未熟粒の発生率が1.5倍になる実験的関係を利用することで、高温指標の一つであるヒートドース(出穂後20日間の平均気温26°C以上の積算値)とCO2濃度より白未熟粒率を予測する手法を新たに開発し、白未熟粒率を指標とした外観品質低下の評価を実施する。
2.気温上昇の予測が中庸な東京大学等の気候モデル(MIROC5)において CO2濃度が高くなる温室効果ガスシナリオ(RCP8.5)を入力した場合、1981~2100年における全生産量(全国の合計収量)の20年毎の平均値は、新たな手法では従来の手法での算定値を下回り、その差は年代が進むにつれて拡大した(図1)。今世紀中盤(2031~2050年)の平均収量は、従来の手法では東海、近畿、九州北部の限られた地域以外では増収となっているが、新たな手法では減収となる地域が関東から九州にかけての広い範囲に拡大している(図2)。また外観品質低下の指標となる白未熟粒率は、気温のみを使用した推定値と比較して、CO2濃度も考慮した推定値の方が高い(図3)。
3.高温・高CO2複合影響を考慮することにより、従来の影響評価結果と比較して、収量、外観品質ともに気候変動による負の影響が顕著になった。この新しい手法による影響評価結果は、今後自治体等による地域適応計画に反映させることが可能であり、間もなく農研機構統合データベースや気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)に登載される見込みである。
成果の活用面・留意点 1.普及対象:自治体の農業部門および普及指導機関、地域気候変動適応センター
2.普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
3.その他:
本成果は自治体等における気候変動適応計画策定・更新のための資料である。 本成果は1kmメッシュの空間解像度を持ち、都道府県および水稲作柄表示地帯レベルでの影響・適応策評価に利用可能である。
図表1 244788-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/niaes/2020/co2.html
カテゴリ 環境制御 水田 水稲 データベース

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