タイトル | 石垣島のサトウキビ栽培では基肥窒素半量でも収量を維持し溶脱量を削減できる |
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担当機関 | (国)国際農林水産業研究センター |
研究期間 | 2016~2020 |
研究担当者 |
岡本 健 安西俊彦 安藤象太郎 後藤慎吉 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 新植サトウキビ栽培では、植付け直後に施用される施肥窒素はサトウキビの初期生育に影響しない。硝酸態窒素溶脱は主に生育初期に発生することから、基肥窒素の施用量を半減しても、収量を維持しつつ地下への窒素負荷量が削減可能である。 |
キーワード | ライシメーター 亜熱帯島嶼 窒素溶脱 肥培管理 サトウキビ |
背景・ねらい | 透水性の高い石灰岩が分布する熱帯・亜熱帯島嶼地域では、肥料由来の窒素が容易に地下に溶脱し、地下水の硝酸態窒素汚染を引き起こす。地下水を生活用水や農業用水として利用している南西諸島の島嶼地域においては、サトウキビ肥培管理による施肥窒素の溶脱が地下水への主な窒素負荷源となっている。特に、根系発達前の生育初期に多量施用される施肥の効果は限定的であり、サトウキビの生育特性に適した肥培管理が重要である。そこで、排水型ライシメーターを用いて、異なる施肥条件下でサトウキビを栽培すると同時に窒素溶脱観測を行い、サトウキビ収量を維持しつつ地下への窒素負荷量を削減する肥培管理法の開発を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1.石垣島の熱帯島嶼研究拠点の屋外有底ライシメーター(面積10 m2、深さ2 m)に石灰岩由来の土壌を詰め、サトウキビ(Saccharum officinarum 品種農林8号)を新植し、天水のみで栽培する(図1)。下端において浸透水を採取し、浸透水量および浸透水中の硝酸濃度を測定する。 2.基肥窒素を現行の施肥基準の半量に削減(T2)しても基肥窒素を全量施用したT1と同程度の収量が維持される。追肥窒素を半減したT4は、基肥無施用のT3と比較して、合計の施肥窒素量が少ないにも関わらず、収量が多いことから、施肥のタイミングは重要である。(表1)。 3.葉面積は、生育初期においては、施肥処理の違いによる差は確認できないが、生育旺盛期においては、基肥と追肥を同時に削減した処理区T5‐7で違いが確認できる(表1)。 4.浸透水中の硝酸態窒素(NO3-N)濃度は、生育初期の4 月後半から6 月後半までの期間で高く、慣行の施肥基準量区(T1)では、8~10 mg L-1の高濃度で浸透水中から検出される(図2)。 5.追肥窒素のみ半量区(T4)、基肥窒素半量区(T2 およびT5)および基肥窒素無施用区(T3 およびT6)では、現行の施肥基準量であるT1 の積算窒素溶脱量(24 kg ha-1)と比べて、それぞれ10 kg ha-1、12 kg ha-1、19 kg ha-1 減少する(図3)。 6.現行の施肥基準における窒素施肥量を15 %削減(35 kg ha-1相当)しても、収量は同レベルを維持しつつ、肥料由来の窒素の溶脱は5割程度削減(12 kg ha-1)できる。 |
成果の活用面・留意点 | 1.適正な肥培管理は、環境負荷の軽減と肥料費の削減に貢献し、あらゆる農家で推奨される。 2.この成果は、沖縄県のサトウキビ栽培における施肥基準(施肥量)を改訂する際の基礎データとなるとともに、地下水帯全般における窒素収支・動態解析のためのデータとなる。 3.適切な肥培管理には、窒素の減肥に加えとりまく環境条件に配慮する必要がある。よって、土壌・気象データを蓄積し、それらを用いたモデル解析が有効である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
研究内容 | https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_a08 |
カテゴリ | 肥料 亜熱帯 さとうきび 施肥 肥培管理 品種 |