リン利用効率の高いイネを推定するための代謝物マーカー

タイトル リン利用効率の高いイネを推定するための代謝物マーカー
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2015~2020
研究担当者 WISSUWAMatthias
植田佳明
近藤勝彦
渡邉むつみ
峠隆之
石川覚
WALTHERDirk
BURGOSAsdrubal
BROTMANYariv
FERNIER Alisdair
HOEFGEN Rainer
発行年度 2020
要約 代謝物の網羅的解析により、活性酸素除去に関わる代謝物やアミノ酸等がイネのリン利用効率と密接に関わることが示された。これらはリン利用効率の高いイネを推定するための代謝物マーカーとして利用できる。
キーワード イネ リン利用効率 品種間差 メタボローム. ロジスティック回帰分析
背景・ねらい 植物の三大栄養素のひとつであるリンは作物の収量と密接に関わり、世界の農地で幅広く施用されているが、その資源量は将来的に枯渇が懸念されており、使用量の増加に歯止めをかける必要がある。そのため、少ないリンをより有効に利用できるリン利用効率の高い作物の開発が求められているが、その複雑な形質に影響を与える中心的な因子の特定は進められておらず、作物の遺伝的改良もほとんど進められていない。本研究では、これまでに幅広いイネ品種の中から同定された、低リン条件におけるリン利用効率の高いイネ品種に特徴的な代謝物のプロファイルおよびその変動パターンを解明することで、効率的にリンを利用する植物を選抜するための新たな指標となる代謝物を特定する。
成果の内容・特徴 1.低リン条件( 1 mg P/個体)において、高リン利用効率品種(MudgoとYodanya)には低リン利用効率品種(TaichungとIR64)と比較して特徴的な代謝物プロファイルが見られる(図1)。リン脂質や糖リン酸等の、既知のリンに関わる代謝物含量の変動パターンはリン利用効率の高低と関連がない。
2.高リン利用効率品種は低リン利用効率品種に比べて、活性酸素除去に関わる代謝物(安息香酸等)や複数のアミノ酸(スレオニン等)といった、これまでにリンとの関連が未知であった代謝物を多く含む(図2)。
3.グルクロン酸、安息香酸、スレオニン等の代謝物マーカー14個の含量データから、質的な確率を予測できる多変量解析の一種であるロジスティック回帰分析を用いて、リン利用効率が未知の7品種におけるリン利用効率の高低を推定できる。
成果の活用面・留意点 1.リン利用効率が代謝物により予測され得ることから、現在広く利用されているDNAマーカーに加えて、複雑な要因が関わる形質の選抜指標として代謝物が有用であり、複雑な形質の改良を目指したイネの開発が迅速化される可能性がある。
2.同定された高リン利用効率品種に特徴的な代謝物はこれまでにリンとの関係が知られておらず、リン利用効率を支える分子メカニズムの基礎的理解にもつながる。
3.本研究は温室および人工気象器内の水耕栽培環境で実施されたものである。今回同定されたリン利用効率の基礎的知見および代謝物マーカーの、実際の圃場における育種への有効性をさらに検証する必要がある。
図表1 244817-1.png
図表2 244817-2.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_b07
カテゴリ 育種 水耕栽培 DNAマーカー 品種

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