非湛水管理による水稲栽培が群落内気温の日変化と収量に及ぼす影響

タイトル 非湛水管理による水稲栽培が群落内気温の日変化と収量に及ぼす影響
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2015~2021
研究担当者 辻本泰弘
吉本真由美
福岡峰彦
FESEINIAbraham
INUSAHYahaya
DOGBEWilson
発行年度 2020
要約 熱帯の灌漑水田において、非湛水管理による水稲栽培が開花時刻(午前)の群落内気温と高温不稔に及ぼす影響は小さい。しかし、乾季の出穂期間中に非湛水管理を行うと、午後から夜間の群落内気温が上昇し、収量が低下する。
キーワード イネ 非湛水栽培 群落内気温 高温ストレス MINCER
背景・ねらい 生育期間の一部、もしくは全体を通して、土壌水分の高い畑状態でイネを栽培する非湛水管理は、水資源の持続的利用や温室効果ガスの削減に貢献することが期待できる。一方で、制御環境でのポット実験の結果から、イネを非湛水条件で栽培した場合、土壌水分を高く維持しても、穂温が上昇し、高温不稔*が助長される可能性が指摘されている(Jagadish et al., 2015, Plant Cell Environ. 38: 16861698)。しかし、熱帯の野外環境において、水管理の違いが、イネの高温不稔を引き起こす開花時(午前中)の群落内気温や収量に及ぼす影響は知られていない。そこで、本研究では、ガーナ北部の灌漑水田を対象に、自立型気象観測装置MINCER**を用いることで、高温ストレスに最も脆弱な出穂期間中の非湛水管理が、イネの群落内気温、不稔率、および収量に及ぼす影響を明らかにする。

* 高温不稔:イネの開花時刻(通常、午前中)に高温になると、葯の裂開が妨げられ、不稔が発生する。開花時刻を過ぎれば、高温にさらされても不稔への影響は小さいことが知られている。
** MINCER (Micrometeorological Instrument for Near Canopy Environment of Rice):イネ群落内の気温と湿度を精密かつ簡便に観測できる装置(平成22年度農業環境技術研究所研究成果情報「イネ群落内の微気象を捉える自立型気象観測パッケージMINCER」)
成果の内容・特徴 1.栽培時期(2016、2017年の雨季作と2017、2018年の乾季作)や品種(IR64, Jasmine85)に関わらず、開花時刻(開花始めから開花ピークまでの時間)における群落内気温差(非湛水管理常時湛水)は、雨季作が0~0.1℃、乾季作が0.2~0.3℃であり、非湛水管理が開花時刻の群落内気温に及ぼす影響は小さい(図1)。
2.栽培時期、品種、水管理に関わらず、イネの不稔率は2.3%~11.8%と低く、開花時刻の群落内気温と同様に、非湛水管理がイネの高温不稔に及ぼす影響は小さい(表1)。
3.乾季に非湛水管理を行うと、常時湛水に比べて、日没前後3時間の群落内気温差の平均値が0.7~0.9℃高くなり(図1)、試験地点および熱帯地域の代表的な水稲品種であるJasmine85およびIR64の収量が、有意に低下する(表1)。雨季作では、水管理の違いによる日没前後3時間の群落内気温差の平均値は0~0.2℃と小さく、収量への影響はみられない。
成果の活用面・留意点 1.本成果は、水不足と高温の両方のリスクをもつ熱帯の水稲生産において、栽培時期に応じた適正な水管理技術の導入に活用できる。
2.乾季の非湛水管理が収量低下を引き起こす要因について、今後の研究で明らかにする必要がある。
図表1 244822-1.png
図表2 244822-2.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_b12
カテゴリ 水田 水稲 品種 水管理

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