数値モデルの活用による長粒米向け籾摺りロールの開発

タイトル 数値モデルの活用による長粒米向け籾摺りロールの開発
担当機関 (国)国際農林水産業研究センター
研究期間 2016~2020
研究担当者 吉橋忠
阿部勇喜
岩崎成彰
坂中宏行
藤中正俊
城戸隆一
発行年度 2020
要約 ロール式籾摺り機における籾摺りの数値解析では、長粒米は短粒米に比べ高い摩擦損失をロールに蓄積し、ロール寿命が短くなる。表面摩擦係数と素材の粘弾性の指標であるtan δを適切に選定することで、高脱ぷ率と長寿命を両立したポリウレタンエラストマーによる長粒米向け籾摺りロールを開発できる。
キーワード 籾摺りロール 長粒米 ポリウレタンエラストマー 数値解析
背景・ねらい 籾摺りは、籾から籾殻を外す操作であり、2つのゴムロールによりせん断応力※1を籾にかけるロール式籾摺機(図1)が広く用いられている。長粒米は世界のコメ生産量の80%を占めており、長粒米のロール式籾摺り機による籾摺りでは、脱ぷ率※2と籾摺りロール寿命が低下する。ロールの素材は1920年代に日本でロール式籾摺り機が発明されて以来、ゴムが使用され続けており、長粒米に向けた新たなロール素材を開発する必要がある。このため、短粒米と長粒米のロール式籾摺り機での挙動を、新たに構築した弾性数値モデルにより解析し、長粒米に適した表面摩擦係数と粘弾性を持つポリウレタンエラストマーを使用した、長粒米向けの籾摺りロールを開発する。
 ※1せん断応力:物体内部のある面と平行方向に、その面にすべらせるように作用する力
 ※2脱ぷ率:籾摺りをした籾から得られる玄米の比率
成果の内容・特徴 1.高速度カメラによる籾摺りの観察に基づき構築した、ロール式籾摺り機の弾性数値モデルと有限要素法による解析によって、長粒米、短粒米の籾摺り時の挙動を把握できる。
2.短粒米は籾摺り機のロール間隙で粒が回ることができ、主軸と副軸ロールの速度差によるせん断応力が摩擦となりにくい。一方、長粒米では粒形のため、間隙で回ることが出来ずにロール表面で滑りが発生し、せん断応力が摩擦として損失する(図2)。
3.ロール表面で摩擦損失として失われるエネルギーは、長粒米が短粒米の3倍程度大きく、籾から籾殻を外すために使われるせん断応力が、摩擦に伴う摩耗及び熱として失われる(図3)。このため、長粒米の脱ぷ率と籾摺りロール寿命が低下する。
4.ロール素材にポリウレタンエラストマーを用い、数値解析を元に高い摩擦係数と適切な粘弾性(tan δ)を持つよう調製した籾摺りロールは、長粒米に対して従来のゴム製籾摺りロールの10倍程度の寿命を持ち、高脱ぷ率を示す(表1)。
成果の活用面・留意点 1.世界の商業精米工場では、連続運転や籾摺り後の玄米品質の面から、ロール籾摺り機が主流であり、交換用ロールは消耗品として市販されていることから、全てのロール式籾摺り機に対して適用可能である。
2.ポリウレタンエラストマーの特徴を活かした長寿命、高脱ぷ率の長粒米向け籾摺りロールにより、ロール交換に伴うコストを削減し、コメのフードバリューチェーンを改善できる。
3.ポリウレタンエラストマーはゴムに比べて耐摩耗性に優れるが一般的には120℃以上の熱には弱いため、累積摩擦損失の少ない素材を使用する必要がある。また、ロール間隙等は、籾摺り機の機種に合わせて調整する必要がある。
図表1 244823-1.png
図表2 244823-2.png
図表3 244823-3.png
図表4 244823-4.png
研究内容 https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2020_c01
カテゴリ コスト

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