森林管理の担い手としての森林組合の動向と課題

タイトル 森林管理の担い手としての森林組合の動向と課題
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 都築 伸行
笹田 敬太郎
鹿又 秀聡
発行年度 2020
要約 近年、森林組合による造林保育は減少し、それを林産事業の増加で補っています。林産事業量は、これまでの間伐による増加に加え、主伐による量も増えています。組合の合併が進み、1組合当たりの生産規模は大きくなり、年間1万m3以上を生産する組合が全生産量の約80%を占めています。一方、年間生産量が5千m3に満たない組合が全組合数の過半数を占め、これらの事業拡大による底上げが課題です。また、森林組合の労働者のうち、特に造林作業を行う臨時(季節)雇用者が減少しています。今後増加する皆伐・再造林に対応する労働者の確保が課題であり、伐出と造林の両方を行う多技能労働者を育成し、通年雇用と処遇改善を進める必要があります。
背景・ねらい  森林資源の成熟に伴い森林組合による造林面積は減少し、1960年代の80万haから2016年には20万haと4分の1になりました。一方で、木材の伐出を行う林産事業は、主伐・間伐ともに増加し、2017年現在600万m3を超えました。
成果の内容・特徴 ■規模の拡大と主伐の増加 
森林組合は経営基盤の強化を目的とした広域合併により、林産事業の規模が拡大するとともに、実施する組合の割合も高くなり、2015年度には80%を超えました(図1)。しかし、依然として年間生産量が5千m3に満たない組合が全組合数の過半数を占めています。2015年度現在、林産事業が1万?以上の組合は全組合数の30%未満で、これらの大規模層が全生産量の約80%を占めています(図2)。林産事業は、2012年頃までは主に間伐による増加でした。2013年以降は主伐・間伐ともに増加がみられます。主伐中心の組合は北海道・東北・九州に多く、特に北海道では100%を外部の民間事業体に委託する組合が多くみられました。一方で、高知県と鳥取県では、施業集約化に成功し利用間伐を中心に急激に林産事業量を増加させている組合も存在しています。
■雇用労働者の変化 
森林組合の雇用労働者数は、1970年代の6万6千人から減少を続け、2017年度では1万5千人となり(図3)、その数は全国の林業従事者の約3分の1を占めています。この間に、年間210日以上働く常勤的な雇用者の割合は増加を続け、2017年度現在、63%となっています(図3)。2011年度と2015年度とを比較すると、「主に造林」作業を行う雇用者のうち、特に年間150日未満の臨時(季節)雇用者が減少しました。一方で、「主に伐出」を行う雇用者の人数は横ばいで、年間の延べ就労日数では微増する傾向にありました(図4)。
■課題と対策 
今後、皆伐・再造林が増加する中、森林組合には2つの課題と対策が必要です。1つは造林労働者の確保です。そのためには、伐出と造林の両方を行う多技能化と通年雇用化が必要です。通年雇用化は、社会保険の加入を促進することで労働条件の改善に繋がり、林業労働も職業選択になり得ます。もう1つは、森林組合の事業拡大や経営基盤の安定化です。充実した労働条件を提供するための前提になります。そのためには個々の森林組合の努力とともに、それを支援するための成功事例や国の施策の情報の提供、さらには国の施策の改善策の提案が重要です。
■研究資金と課題 
本研究は、実施課題イイa1「持続可能な林業経営と木材安定供給体制構築のための対策の提示」による成果です。
■文献
都築伸行・笹田敬太郎(2020)主伐を中心に林産事業を展開する森林組合の動向.関東森林研究71(1),173-174.専門用語林産事業:森林組合の事業区分の1つで森林組合が自らまたは他の事業体に委託して木材を生産する事業。
図表1 244843-1.png
図表2 244843-2.png
図表3 244843-3.png
図表4 244843-4.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p24-25.pdf
カテゴリ 経営管理

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