国産早生樹の利用可能性を探る―樹種の特徴を知り、使い方を工夫する―

タイトル 国産早生樹の利用可能性を探る―樹種の特徴を知り、使い方を工夫する―
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 松村 ゆかり
伊神 裕司
児嶋 美穂
鴨田 重裕
発行年度 2020
要約 木質資源への多様なニーズに対応し、林業の収益性改善につながる新たな植栽樹種として、成長のはやい早生樹が注目されています。ただし、国産早生樹についてはこれまで利用例が少なく、生産・利用の取組が手探りで進められているのが実情であり、今後国産早生樹を利活用していくためには、その性能や適切な加工条件に関する基礎的な情報が必要です。そこで本研究では、国産早生樹種について、材質や加工特性に関するデータの蓄積を始めました。密度や含水率の樹幹内での変動や、製材加工条件に関する基礎的な知見は、樹種選択や効率的な加工を行うための有用な情報となります。
背景・ねらい  成長がはやい早生樹には、「林業経営における収穫サイクルを短くできる」、「短期間に多くの炭素を固定するため気候変動対策に貢献できる」等の利点があります。また、短伐期で家具用材等として利用できる大径木を得られることから、輸入広葉樹材の代替としての利用も期待されています。こうした背景から、新たな植栽候補樹種として国産早生樹が注目されていますが、樹種を選択するためには、その材が用途に応じた性能を有しているか、うまく加工するにはどのような条件が適切か、といった基礎的な情報が必要です。そこで本研究では、国産早生樹の利用可能性を探るため、材質や加工特性に関する基礎的なデータの蓄積を始めました。
成果の内容・特徴 ■樹種の特徴を知り、活かす 
ここでは、国産ユーカリ属のデータを示します。ユーカリ属(Eucalyptus)には成長のはやい樹種が多く、主にパルプ用材として世界各地で植林されています。国産ユーカリについては家具用材等としての利用例はほとんどなく、今後の利用可能性を検討するため、基礎的な材質や加工特性を調べました。 木材の強度や収縮率など、利用する上で重要な物理的性質に影響をあたえる密度は、髄から外側に向かって増加する傾向がありました(図1)。ある程度径が大きくなると、密度の高い材を多く得られることになります。含水率は髄付近で高く外側に向かって減少する傾向がありました(図1)。表面硬さは、木口面、柾目面、板目面とも密度が同程度の国産材や南洋材の樹種と近い値を示し(図2)、同様の用途に利用可能な性能を有すると考えられました。
■加工条件と使い方の工夫 
木材を製材するとき、一般に送り速度が速くなるほど切削力(ここでは帯鋸の走行方向と同方向に生じる力:主分力)が大きくなります。ユーカリ属の樹種についてもその傾向が見られました(図3)。また、被削材の密度が大きい樹種ほど切削力が大きい傾向がありますが、ユーカリ属の場合は必ずしも密度の大きさの順とはなっておらず、樹種による違いもあることがわかりました。さらに、製材時の挽幅(ひきはば)が大きい場合には、送り速度が速くなると製材した板の厚さが均一にならないなど製材精度が低下することもあるため、樹種や密度によってバランスの良い製材加工条件を設定することが重要です。ユーカリ属の樹種には、乾燥後の製材品の曲がりやねじれが非常に大きい樹種や割れ等が多く発生する樹種があり、無欠点の広い材面を得るのが難しい場合には、短尺での利用や集成加工するなど使い方の工夫が必要でしょう。今後は、センダン、ユリノキ、コウヨウザン等の他の国産早生樹についても、同様に基礎データの収集を進めていきます。
■研究資金と課題 
本研究は、実施課題「大径材及び早生樹を対象とした木材加工技術の開発と高度化」による成果です。
■文献
松村ゆかり(他)(2020) 国産ユーカリの鋸断特性と製材品品質. 木材工業, 75 (4), 156-161.
図表1 244845-1.png
図表2 244845-2.png
図表3 244845-3.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p28-29.pdf
カテゴリ 加工 加工特性 乾燥 気候変動対策 経営管理 ゆり

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