タイトル | 国産材CLTの製造コストを半減し施工コストを他工法並みにする技術開発 |
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担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | ---- |
研究担当者 |
塔村 真一郎 服部 順昭 |
発行年度 | 2020 |
要約 | スギ等の地域材を活かすCLTの需要拡大と活用促進に向けて、製品価格を半減し施工コストを他工法並みにするための技術開発に取り組みました。製造工程の効率化と製品仕様の標準化による低コスト化、付加価値の高い非構造用CLTや保存処理CLTを製造する技術の開発に加え、製造や流通におけるコストと環境影響の評価に取り組み、製品価格半減への道筋を示しました。さらに、2時間耐火CLTなどの技術開発により中高層建物向けの仕様を確立するとともに、低コストかつ現場で使いやすい施工方法を開発し、施工コストを他工法並みに近づけました。 |
背景・ねらい | CLTの製造コストを低減させるため、従来の15mmに代る6mm~4mmのフィンガージョイントをCLTに適用する技術を開発し、消費電力量を半減させました。また、接着時間の短縮と積層工程の自動化により生産効率が10%向上することを小型CLT試作機(写真1)で実証しました。さらにこの試作機は、非構造用・内装用途で付加価値の高い薄物パネルも製造できることから、地域材の有効活用を目指す山間部でのCLT生産向けのモデル機として提案しました。 次に量産化と常時在庫品確保によるコスト削減を図るため、日本CLT協会や設計者と協議して、建築の床や壁の用途毎に、標準となる製品のサイズと仕様を定め、その標準サイズを製造するのに適した工場ラインを提案しました。また、CLT壁の開口部を効率よく製造する方法等を提案しました。さらに、需要拡大に向けて、保存処理CLTの製造技術と評価方法(写真2)の開発を行いました。 CLT製造コスト評価のためのシミュレーションツールを開発して、生産量と原材料費に関わるシフト数(8時間/日を1シフトとする交代制勤務)、ラミナ購入価格などの変数の影響の大きさを明らかにしました。さらに、コスト半減を実現する年産1.3万m3の中規模工場と2.6万m3の大規模工場の製造モデルを提案し、今回開発した技術等の導入効果を明らかにしました(図1)。本ツールは民間企業等に活用してもらうことで、地域の実情に適したCLT製造の事業化の推進に役立ちます。 |
成果の内容・特徴 | ■施工の効率化及び他工法とのフルコスト比較 CLTの施工コストを低減させるため、これまでより施工精度管理が容易な方法を開発し、実大施工実験により建設時間の大幅な短縮の可能性を実証しました(写真3)。また、2時間耐火CLTの仕様を開発し、中高層CLT建築への実装を可能としました。CLT工法と比較するために、鉄筋コンクリート(RC)造および鉄骨(S)造の建築物の試設計も行い、環境影響評価を加えて、内部コスト(施工コスト)と外部コスト(環境負荷量から得られる社会コスト)を合わせたフルコスト評価を行いました。 これらの取組を通じてCLTを使った建築物の躯体費における施工コスト(坪単価90万円)を、鉄筋コンクリート造(坪単価75万円)並とする見通しが付きました。 一方、耐火構造ではオールCLT造にすると、耐火性能付与に必要な石膏ボードによる外部コスト及び内部コストが他工法より大きくなること、CLT+S造ではやや低コスト化が図れるものの、依然として耐火関連のコスト削減が課題であることなどもわかりました。 ■研究資金と課題 本研究は、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターの革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)「国産材CLTの製造コストを1/2にするための技術開発」及び「CLTを使った構造物の施工コストを他工法並みにする技術開発」(平成29年度~令和元年度)により実施したものです。 ■専門用語 躯体費:直接工事費のうち、仮設費・設備費を除いたもの。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p30-31.pdf |
カテゴリ | 経営管理 コスト 需要拡大 低コスト |