スギの成長や材質に関わる遺伝領域を特定し環境要因と遺伝要因の影響を明らかにする

タイトル スギの成長や材質に関わる遺伝領域を特定し環境要因と遺伝要因の影響を明らかにする
担当機関 (国)森林総合研究所
研究期間 ----
研究担当者 森 英樹
上野 真義
伊原 徳子
松本 麻子
内山 憲太郎
藤原 健
山下 香菜
吉田 貴紘
金谷 整一
酒井 佳美
遠藤 良太
小林 沙希
松井 由佳里
草野 僚一
森口 喜成
津村 義彦
発行年度 2020
要約 九州地方のスギを交配して得た139種類のクローン苗を、環境の異なる3箇所の試験地にて約10年間育てて、成長や材質を測定するとともに、これらクローン苗の遺伝情報を解析しました。その結果、成長は試験地によって大きく異なる一方で、材質は成長に比べて、試験地による影響をあまり受けていませんでした。また、各試験地で平均して53の形質に関連した遺伝領域が見つかりました。それらほとんどが試験地によって異なっていましたが、複数の試験地で共通している遺伝領域もあり、それらの多くは、材質に関する遺伝領域でした。これらの結果から、スギの材質に関する形質は、生育環境よりも遺伝要因の影響を強く受けることがわかりました。
背景・ねらい  スギは我が国の主要な造林樹種として、気候風土に応じて様々な形質(成長や材質)を有する品種が植栽されてきています。これら形質に影響を及ぼす遺伝的要因と環境要因を評価し、そのメカニズムを解明することは、将来の環境変動に対する樹木の形質を予測する上で重要です。そこで、同一の遺伝情報をもつクローン苗木を異なる環境に植栽して、その成長や材質を比較しました。九州地方のスギを交配して得た139種類のクローンのスギ苗を、2005年に茨城県、千葉県および熊本県に設定した試験地に植栽しました。2015年には熊本県、2016年には千葉県、2017年には茨城県の試験地において、植栽したスギをすべて切り倒して、幹の直径や樹高などの成長と、曲げ強度、木材の密度および含水率などの材質を測定しました。その結果、スギの成長は試験地によって大きく異なりました。一方で、材質は成長に比べて、試験地による影響をあまり受けていませんでした。このことから、スギの材質に関する形質は遺伝要因の影響をより強く受けていることが示唆されました(図1)
成果の内容・特徴 ■材質は遺伝要因の影響を受けやすい遺伝領域を特定して、形質への影響を明らかにした 
成長と材質に影響する遺伝領域を特定すると、各試験地で平均して53の関連する遺伝領域が見つかりました。これらの多くは試験地によって異なっていました。一方、複数の試験地で同じ遺伝領域が形質に関係している場合もあり(図2)、それらの多くは、材質に影響を及ぼす遺伝領域でした。このことは、材質が環境の影響を受けにくく遺伝的な影響を受けやすいという傾向を反映していると考えられます。このような傾向は、ポプラやユーカリなどの研究でも報告されていましたが、スギでは初めて遺伝情報を用いて解明したもので、今後、気候変動に対するさまざまな適応策を考える上で重要な知見となります。
■研究資金と課題 
本研究は、森林総合研究所交付金プロジェクト1#201421「有用遺伝子の特定に向けたスギ全ゲノム走査」による成果です。
■文献
Mori, H., Ueno, S., Ujino-Ihara, T., Fujiwara, T., Yamashita, K., Kanetani, S., Endo, R., Matsumoto, A., Uchiyama, K., Matsui, Y., Yoshida, T., Sakai, Y., Moriguchi, Y., Kusano, R., & Tsumura, Y. (2019) Mapping quantitative trait loci for growth and wood property traits in Cryptomeria japonicaacross multiple environments. Tree Genetics &Genomes, 15(3), 43.
図表1 244850-1.png
図表2 244850-2.png
研究内容 https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p38-39.pdf
カテゴリ クローン苗 品種

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