タイトル | 国産トリュフの栽培技術の開発 |
---|---|
担当機関 | (国)森林総合研究所 |
研究期間 | ---- |
研究担当者 |
山中 高史 小長谷 啓介 仲野 翔太 中村 慎崇 古澤 仁美 野口 享太郞 木下 晃彦 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 西洋料理の高級食材であるトリュフは、近年、日本にも分布することが明らかになりました。そこで、国産トリュフの安定的な生産に向けて人工栽培技術の開発を開始しました。まず、食用として有望な国産トリュフ2種(アジアクロセイヨウショウロとホンセイヨウショウロ)の種を確定しました。これら2種は、主にコナラやクリなどのブナ科樹木の林に発生し、土壌環境を比べると、pH値や養分条件が異なることを明らかにしました。この結果を踏まえて環境条件を整えた圃場に、トリュフ菌を共生させた苗木を植栽することで、トリュフ菌を長期間苗木に定着させることに成功しました。 |
背景・ねらい | トリュフは西洋料理において高級食材として知られるキノコです。球形~塊状のキノコを地表近くに作ります。近年、日本においてもトリュフが分布することが明らかになり、国産種の人工栽培を目指した研究開発を開始しました。国内各地における発生事例が多く、キノコが比較的大型で食用に有望な種であるアジアクロセイヨウショウロ(黒トリュフ)とホンセイヨウショウロ(白トリュフ)の2種(図1)について、発生地の樹種と土壌環境を調べました。その結果、これらトリュフは共通して、主にコナラやクリなどブナ科樹木の林に発生していました。しかし、土壌環境を見ると、黒トリュフの発生地はpHが6~8で、カルシウムなどの塩基(養分)を多く保っているのに対し、白トリュフの発生地はpHが5~6で養分に乏しいことがわかりました(図2)。これらのトリュフの菌株について、菌糸の生長に適した培地のpHを調べた結果、黒トリュフではpH7、白トリュフではpH5~6が生育に適した値であり、野外の発生地の土壌条件と一致していました。 |
成果の内容・特徴 | ■トリュフ菌根形成苗木の植栽による菌の定着に成功 トリュフは、樹木の根に共生する菌根菌であり、樹木から栄養分を獲得し、土壌中に栄養菌糸体を発達させてキノコを作ります。そのため、トリュフを人工栽培するためには、トリュフ菌を共生させた苗木を植栽するか、既に生育している樹木に菌を共生させて、土壌中に菌糸を定着させることが必要です。そこで、キノコをすりつぶして作った胞子懸濁液を用いて、コナラなどの苗木の根に菌を共生させて、これらを圃場に植栽しました。植栽1年後に、苗の根系を観察すると、植栽後に伸長した根にトリュフ菌の菌根が形成され、トリュフ菌の定着に成功したことが確認できました(図3)。今後は、土壌中の菌糸量や菌根形成量を測定して、菌の定着の推移を明らかにしていきます。 ■研究資金と課題 本研究は、農林水産省委託プロジェクト研究「森林資源を最適利用するための技術開発」のうち「高級菌根性きのこ栽培技術の開発」による成果です。 ■文献 古澤仁美(他)(2020)日本における2種のトリュフ (アジアクロセイヨウショウロ およびホンセイヨウショウロ) の生息地の土壌特性.森林総合研究所研究報告, 19(1),55-67.Nakano, S. et al. (2020) Influence of pH on in vitro mycelial growth in three Japanese truffle species: Tuber japonicum,T. himalayense, and T. longispinosum. Mycoscience, 61, 58-61. ■専門用語 菌根菌:土壌中に生息する菌類の一種で、植物の生きた根に共生して菌根という器官をを形成し、そこを介して、植物からの養分を得て生育する。トリュフのほか、マツタケなども菌根菌であり栽培技術が確立されていない種が多い。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2020/documents/p40-41.pdf |
カテゴリ | くり 栽培技術 土壌環境 |